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【安倍政権考】財務省に切り崩される再増税慎重派

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【安倍政権考】財務省に切り崩される再増税慎重派

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11月5日、自民党本部で開かれた「アベノミクスを成功させる会」の第3回会合。会場内は空席が目立った=2014年、東京都千代田区永田町(寺河内美奈撮影)  安倍晋三首相(60)が来年10月からの消費税率10%再引き上げの適否を判断するのを前に、再増税に慎重な自民、公明両党議員に対する財務省の切り崩しが激しさを増している。財務省は、財政規律の観点から、幹部らが若手議員を中心に再増税の必要性を説いて回っているのだ。

 減る一方の出席者

 5日、自民党本部の会議室。自民党有志でつくる再増税先送りを求める「アベノミクスを成功させる会」の第3回会合に出席した議員は15人だった。10月22日の初会合には45人が出席した。100人を目標としたが、10月31日の第2回会合は22人と逆に半減し、先細りの印象を与えている。

 「日本銀行も(4月の8%への)消費税率引き上げで経済がおかしくなったことをようやく認めたということだ。当然、消費税率の再引き上げは来年度中にはできない」

 会合で会長の山本幸三衆院議員(66)は、日銀が第2回会合のあった日に追加金融緩和に踏み切ったことを引き合いにこう語った。出席者からは「引き上げの判断をしたら税率が上がるまで10カ月あるが、駆け込む余力もないのではないか」の声もあがったが、15人では盛り上がるはずもなかった。

 会合後、記者団に「財務省の圧力は感じているか」と質問された山本氏は「みなさん、『財務省が来たよ』と言っているので、根回しをしているんでしょ。それで影響されるようでは、しようがないわな」と苦笑した。

 財務省の「ご説明」は激しい。説明を受けた「成功させる会」のあるメンバーは「財務省は(財政の健全性を示す)プライマリーバランス(基礎的財政収支)のことしか考えていない。とんでもない」と憤る。メンバーの若手の一人も「やたらと財務省がアポイントを取ろうとしている」とうんざりした様子だ。

 財務省だけではない。増税派の牙城、自民党税制調査会の町村信孝顧問(70)は町村派(清和政策研究会)の総会で「税率を引き上げないという選択肢はない」と訴え、慎重派を牽制(けんせい)する。

 再び連携を模索

 透けてみえる財務省と党税調の二人三脚の光景-。押され気味の山本氏の強い味方は公明党の上田勇衆院議員(56)だ。

 「成功させる会」は初会合で、約1年半の増税先送りを訴える、安倍首相の経済政策ブレーン、本田悦朗内閣官房参与(59)を講師に招いた。その翌日の10月23日、党経済再生調査会の会長を務める上田氏は山本氏のもとを訪れた。

 上田氏「私も本田先生を招いて勉強会を開こうと思ってるんです」

 山本氏「大いにやってください」

 公明党内も山口那津男(なつお)代表(62)を中心に増税派が幅をきかせる中、上田氏は10月31日、党の調査会に本田氏を招いた。

 だが、そこに集まったのは約10人。上田氏は11月4日も調査会を開き、別の先送り論者を講師に招いたが、集まったのはまたしても10人前後だった。

 山本、上田両氏に分が悪そうにみえるが、両氏が踏ん張っていられるのはワケがある。

 「成功させる会」の原型は、2011年に発足した「日銀法改正でデフレ・円高を解消する会」で、初代会長は今の安倍首相だった。上田氏は、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)と同じ神奈川県を地盤とし、気脈が通じている。ちなみに、上田氏の選挙区である神奈川6区に自民党は候補者を立てていない。

 実は、山本、上田両氏は一緒に議員連盟を立ち上げることも検討したが、まずは互いに党内で勢力を拡大させようとの結論に至った経緯がある。現実が甘くはなかったのは、会合の出席者数を見れば一目瞭然(りょうぜん)だ。2人は今、再び連携を模索している。(坂井広志/SANKEI EXPRESS

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