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経済
トヨタ最終利益 初の2兆円に上方修正 「新ビッグ3」競争激化 次の一手は
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トヨタ自動車の業績推移=2008年~2015年3月期。※2015年3月期は見通し、販売台数はダイハツ工業と日野自動車を含む トヨタ自動車は5日、2015年3月期の連結業績予想について、最終利益を従来予想に比べ2200億円多い前期比9.7%増の2兆円に上方修正した。減益予想から一転し、初めて2兆円の大台に乗る見通し。国内最大の製造業であるトヨタの好業績は雇用や賃金の改善に貢献しそうだ。
円安が一段と進んだことで本業のもうけを示す営業利益ベースで1350億円の為替差益が出るほか、コスト削減などでさらに利益を500億円上積みする。ダイハツ工業と日野自動車を合わせたグループ世界販売は、消費税増税の影響が続く国内などの減速を受け、中国を含む小売りベースで1010万台と従来計画から15万台引き下げた。
売上高は従来予想に比べ8000億円多い26兆5000億円、営業利益は2000億円多い2兆5000億円となり、過去最高を更新する見通し。
5日発表の9月中間連結決算は営業利益が前年同期比7.7%増の1兆3519億円と中間決算で7年ぶりに過去最高を更新した。
小平信因副社長(65)は記者会見で、「頑張った従業員に報酬で還元するのは当然」と述べ、15年春闘での2年連続のベースアップ実施に前向きな姿勢を示した。
≪「新ビッグ3」競争激化 次の一手は≫
トヨタ自動車が5日発表した2015年3月期の業績予想の上方修正により、トヨタの「稼ぐ力」の回復が鮮明となった。こうした中で、安易な生産拡大を戒め、13年度から3年間凍結した工場新設の解禁を求める声も強まっている。独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)を含む「新ビッグ3」の競争が激しくなるなか、足踏みを続ければ世界首位の座を奪われかねない。トヨタは世界販売1000万台の“次”に向けた成長への決断を迫られている。
「既存設備を最大限に活用して稼働率を上げ、効率の良い投資をする。16年4月以降どうするかは需給動向次第で検討する」
小平信因副社長は5日の記者会見で、工場新設について慎重な物言いに終始した。ただ、足元では生産投資の解禁に向けた動きも出始めている。
中でも注目されるのが、北米への輸出拠点となるメキシコ新工場の建設案だ。昨夏の幹部会では、豊田章男社長(58)がこの建設案を突き返したもようだが、米国に隣接し人件費も安いメキシコでは日産自動車やホンダ、マツダなど工場新設が相次いでいる。
また、メキシコ以外にも「生産投資の解禁を見据え、各地で提案が出ている」(トヨタ関係者)といい、生産拡大に向けた社内の機運は高まっている。
トヨタはリーマン・ショック後の赤字転落や米国での大量リコール(回収・無償修理)、東日本大震災による供給網の寸断などから、過去の拡大路線を封印した。工場の新設は原則凍結し、既存工場の能力増強で対応する一方、徹底したコスト削減を行うなど経営体質の強化に努めてきた。ただ、豊田社長は「1000万台という未知の世界で成長し続けるには、身の丈を超えた拡大を絶対にしない覚悟が必要だ」と述べ、安易な拡大路線への回帰は認めない構えだ。今年度を「意志ある踊り場」(豊田社長)と位置づけたトヨタは、研究開発費に過去最高の9800億円を投じ、将来の成長につながる開発力の向上を優先してきた。
ただ、年内の1000万台超えを掲げるVWは、中国での工場建設など、今後5年間で182億ユーロ(約2.6兆円)を投じる。ライバルが積極的な生産投資で、トヨタの首位を脅かす中、「守りを固めるだけで、持続的な成長はあり得ない。トヨタが攻めに転じる時期はそう遠くない」(自動車アナリスト)との見方も根強い。(田辺裕晶/SANKEI EXPRESS)