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経済
大塚家具 久美子社長続投、株主総会で6割支持 事業継承、難しさ浮き彫り 企業価値毀損も
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株主総会後の記者会見に臨む、大塚家具の大塚久美子社長=2015年3月27日午後、東京都江東区(共同) 親子で経営権を争っている大塚家具は27日、株主総会を開き、大塚久美子社長が会社提案した、自身の続投と父で創業者の勝久会長の退任を求める議案が議決権の61%を得て可決された。勝久氏が求めていた、久美子社長を退任させて勝久氏が社長に復帰する株主提案は否決。株主による判断が下され、当面の経営権をめぐる親子の争いが決着した。
大塚家具は総会後に取締役会を開き、久美子社長の再任と勝久氏の会長職退任を決定した。久美子社長は記者会見で「名実ともに新体制になる。ブランドの再構築など次のステージに進む」と経営改革に取り組む決意を示した。今後、勝久氏が推進してきた会員制や高価格路線と決別し、中価格帯の商品を強化する経営モデルを加速させる。
大塚家具ではことし1月以降、経営手法の相違や感情のもつれから、久美子社長と勝久氏の間で対立が表面化。その後、幹部社員や取引先を巻き込んだ争いとなり、両者は株主の支持を取り付ける委任状争奪戦を、株主総会直前まで展開していた。
久美子社長は総会で、自身の社長続投を求めた会社提案の取締役選任議案について「企業価値や株主の利益を向上することができると確信している」と説明し、株主に支持を求めた。一方、勝久氏は「クーデターによって社長の座を奪われた」と述べ、自身が経営権を取り戻す株主提案議案に理解を求めた。
株主からは「娘と父親がけんかしているところで家具を買うか。会社は大切なことを忘れたのではないか」と会長と社長双方を批判する声が出た。
久美子社長の提案は、総会で大塚家関連を除いた一般株主の約8割の支持を得た。
総会は3時間15分で終了し、約200人が出席した。
大塚家具は経営権をめぐる混乱や消費税増税後の節約志向の高まりから、業績不振が続いている。
≪事業継承、難しさ浮き彫り 企業価値毀損も≫
創業家父娘が激しい委任状争奪戦を繰り広げた大塚家具の27日の株主総会は、長女である大塚久美子社長を取締役に選び、父親で創業者の勝久氏の「追放」でひとまず決着した。だが、顧客不在の不毛な争いで企業イメージは毀損(きそん)。今後、勝久氏が筆頭株主として株主提案などで対抗し、対決が泥沼化して顧客離れが加速する恐れもある。今回の騒動は同族企業の後継者へのバトンタッチが難しさを浮き彫りにした。
「こんな騒動があってはならない。企業価値が壊れるだけだ」「一族の醜態だ。会社は一族のものではない」。
この日の総会は一般の株主からこうした厳しい声が相次いだ。
ただ、両者の争いは今後も続く見通しだ。
勝久氏は久美子社長が支配する資産管理会社をめぐって民事訴訟を起こしており、父娘の対立は法廷でも行われる。
勝久氏は総会前の産経新聞の単独インタビューで「今回負けても、次の総会で株主提案をしていく」と明言。一方、久美子氏は「(株主)安定化のための施策をとる」と、勝久氏の持ち株比率を下げるため第三者割当増資などを打ち出す構えをみせる。
しかし、争いの長期化は企業イメージを悪化させ、既存店売上高のマイナスが続く苦境を、さらにひどくしかねない。また、増資は株を希薄化させ、既存株主の利益を損なう。
SMBCフレンド調査センターの田中俊上席主任研究員は「今回の大塚家具の問題は、創業者トップからの後継者への事業継承が難しいことを改めて示した」と指摘する。
流通業界関係者も「創業者はゼロから会社を作り上げた自負がある。後継者の仕事が思い通りでないと、自分が乗り出したくなる」と話す。とくに創業者は大株主でもあるため、発言力は強い。
大手上場企業ではファーストリテイリングで17年、3年前に就任したばかりの玉塚元一社長(現ローソン社長)を創業者の柳井正会長が事実上解任したことが話題になった。
25年に不適切な会計処理が発覚した雪国まいたけは創業者、大平喜信社長が辞任したものの、大株主として株主総会でイオン出身の社長を解任するなど関与を強化。反発した経営陣と銀行団の要請を受けた米投資ファンドが、雪国まいたけ株のTOB(株式公開買い付け)を始める異例の事態に発展した。
大塚久美子氏は総会後の会見で「信頼回復のため、誠心誠意、お客さまに尽くす」と述べた。同族企業の経営に詳しい神戸大大学院の三品和広教授は「最終的には創業者がいかに身を引くか、後継者を親族や社員にこだわらず、いかに育成するかが問われている」と話している。混乱を早期に収拾し、事業継承の「成功例」となれるか。久美子社長ら経営陣に注ぐ株主や顧客などステークホルダー(利害関係者)の視線は一段と厳しくなっている。
≪株価は乱高下 終値は16円安の1566円≫
27日の東京株式市場で、大塚家具の株価が乱高下した。株主総会では創業家の親子が経営権をめぐって争ったが、長女の大塚久美子社長の続投が決まった直後の約3分間で227円も値が動いた。終値は前日比16円安の1566円だった。
寄り付きから上昇し、午前は高値圏で推移した。午後1時すぎに社長の続投と会長の退任を求める会社提案が可決されると、1523円から1750円まで激しく値が動いた。
その後は材料が出尽くしたとの見方から利益確定の売りが広がり、取引終了にかけて前日終値を下回った。市場関係者は「日経平均株価が午後に急落するなど、相場全体の動きも影響した」と指摘している。(SANKEI EXPRESS)