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NY原油、5年5カ月ぶり60ドル割れ 円安値上げを帳消し 家計に恩恵

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NY原油、5年5カ月ぶり60ドル割れ 円安値上げを帳消し 家計に恩恵

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12月11日、原油相場の1バレル当たり60ドル割れを材料に株売買の注文が飛び交うニューヨーク証券取引所。朝方発表された米消費関連の指標が好調だったことを好感してダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発したが、原油安の経済への悪影響が意識され、ダウは取引終了にかけて上昇幅を縮めた=2014年、米ニューヨーク(AP)  11日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は続落し、指標となる米国産標準油種(WTI)1月渡しが前日比0.99ドル安の1バレル=59.95ドルで取引を終えた。2009年7月以来、約5年5カ月ぶりに60ドルを割り込んだ。11日の通常取引終了後の時間外取引では一時58ドル台に下落。12日に入っても売り注文が優勢で、午前5時現在は前日比0.75ドル安の59.20ドルをつけた。

 今年7月までは1バレル=100ドルを超える水準で推移していたが、4カ月余りで約4割下落した。

 欧州や中国の景気減速で需要が低迷する中、米国で「シェールオイル」の増産が続き供給量が増加。また、石油輸出国機構(OPEC)が11月の総会で減産見送りを決めたため、供給過剰感が強まり価格下落に拍車をかけている。

 日本も含むアジア市場で指標となるドバイ原油も、11日の終値は1バレル=61.51ドルまで下落し、直近の高値となる6月中旬の1バレル=111.16ドルから45%も値下がりしている。

 米エネルギー情報局(EIA)は今月、来年の平均価格見通しを1バレル=62.75ドルに下方修正しており、原油安が長期化する公算が大きくなっている。

 11日にはジャック・ルー米財務長官(59)が原油安は米経済にとって総じてプラスだと発言し、米政府は原油の値下がりを容認しているとの見方が強まった。日本経済にとっても原油安はガソリンや灯油価格を下げるため、消費者への恩恵が大きい。

 一方で、石油関連企業は収益悪化が懸念され、業界再編などの動きが起きる恐れもある。英石油大手のBPは10日、15年末までに10億ドル(約1200億円)規模のリストラを実施すると発表している。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS

 ≪円安値上げを帳消し 家計に恩恵≫

 原油安は、日本の景気には追い風となる。ガソリン価格が夏場に比べて1割程度下がったほか、灯油や電気料金も引き下げられている。円安で冷凍食品や即席麺など食品値上げの表明が相次ぐなか、原油安は家計に恩恵をもたらす。ただ、原油安で物価が下振れすれば、政府・日銀が目指す「脱デフレ」には逆風となる可能性もある。

 燃料・光熱費 値下がり、値下げ

 8日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル当たり155円30銭で、1年5カ月ぶりの低水準になった。値下がりは21週連続で、7月中旬に比べ9%下がった。調査した石油情報センターは「ガソリン価格は来週も下がるだろう」と予想する。

 冬場に需要が増える灯油(店頭)も18リットル当たり1800円と、直近の高値である8月中旬に比べ7%値下がりした。

 電気やガス料金も、原油などの価格変化を料金に反映させているため、全国の電力10社と都市ガス大手4社は12月の料金を値下げする。電気料金を標準的な家庭でみると、前月比の下げ幅が最も大きいのは中部電力の15円で、東京電力の14円が続く。東京ガスは11円値下げする。

 一方、日本航空は来年2月~3月の発券分で、燃料費に応じて国際線の運賃に上乗せする「燃油サーチャージ」を引き下げる。ハワイ行きの場合では、片道1万3500円が8500円に値下がりする。

 コンビニ袋などに使われるポリエチレンなどのプラスチックも、価格が低下傾向にある。原料のナフサ(粗製ガソリン)価格が下がっているためで、今後、包装材などの値下がりにつながる可能性もある。

 脱デフレは停滞も

 円安を背景に冷凍食品やアイスクリーム、パスタ、食用油などは、主要各社が値上げを表明している。それでも足元の円安水準ならば、こうした食品値上げのマイナス面を「原油安が帳消しにし、経済全体ではプラスに働く」(大和総研の熊谷亮丸(くまがい・みつまる)チーフエコノミスト)との見方は多い。

 これまで円安が輸入物価を押し上げてきたが、急激に進む原油安は物価の下押し圧力となる。日銀は脱デフレに向け「2年で2%」という消費者物価上昇率の目標を掲げる。

 足元の原油安の状況が続けば、「消費者物価を0.2~0.3%程度押し下げる」(メリルリンチ日本証券の吉川雅幸エコノミスト)とみられ、日銀の物価上昇目標に「黄色信号」がともりかねない。(SANKEI EXPRESS

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