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経済
原油安、ルーブル直撃 新興国通貨に下落圧力 逆オイルショック 安倍政権に冷水
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ルーブルのレートを表示する電光掲示板。ロシアではルーブルの急落を受け、外貨への両替の制限や停止が相次いだ=2014年12月16日、ロシア・首都モスクワ(ロイター) 原油安や欧米からの経済制裁で打撃を受けるロシア各地では17日、通貨ルーブルの急落を受け、米ドルなどに交換する動きが表面化し、外貨への両替の制限や停止が相次いだ。その他の新興国通貨にも下落圧力がかかっており、世界経済の不透明感が高まるなか、原油、外国為替、株式市場を巻き込んだ金融市場の混乱が続いている。
混乱の発端となったのが、11月末に石油輸出国機構(OPEC)が減産を見送った原油市場だ。16日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、指標となる米国産標準油種(WTI)1月渡しが小幅ながら5営業日ぶりに反発。前日比0.02ドル高の1バレル=55.93ドルで取引を終えたが、市場では「1バレル=50ドルを割り込む可能性もある」とみられている。
また、経済の堅調な拡大が続く米国の連邦準備制度理事会(FRB)が17日午後(日本時間18日未明)に発表する声明で利上げに前向きな姿勢を示すとみられていることも、為替市場の波乱要因だ。
米国の利上げは新興国からの資金流出を招く要因とされ、ブラジル、南アフリカ、トルコなどの新興国通貨で対ドルでの下落傾向が続いている。
欧州株式市場は16日、大幅反発したが、続く米国市場ではリスク回避のための利益確定売りが優勢となり、ニューヨーク証券取引所のダウ工業株30種平均は3営業日続落の1万7068.87ドルと、約2カ月ぶりの安値水準となった。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS)
≪逆オイルショック 安倍政権に冷水≫
「まるで乱気流に巻き込まれたようだ」
ルーブル下落のあおりを受け、投資家の買いが比較的安全な資産とされる円に殺到し、16日の外国為替市場の円相場は一時、1ドル=115円台に急騰。日銀の追加金融緩和後、短期間に1ドル=10円も下落した円安がウソのようなマネーの逆流に、大手邦銀の為替ディーラーは青ざめた。
原油を主要産品とするロシアは、1バレル=100ドル程度で国家予算を組んでいるとみられるが、足元はほぼ半値の50ドル台。夏場以降に進んだ原油価格の急落で国家財政が揺らぎ、ルーブルが売られた。
ロシアと同様の構図で、外貨収入の多くを原油などの資源輸出に頼る新興国の通貨は軒並み売られ、通貨安はノルウェーのクローネやメキシコのペソ、インドネシアのルピアなどにも拡大。インドネシア政府と中央銀行も16日、通貨ルピアの急落に耐えきれず、為替介入に踏み切った。
新興国の経済減速の影響は、貿易取引を通じて欧米や日本など先進国にも波及するとの連想から、世界の投資マネーは一気にリスク回避姿勢を強めた。
金融市場の動揺は、株式市場や債券相場の乱高下へと飛び火。原油急騰が、世界経済の混乱を招いたかつてのオイルショックに対し、今回は急速な原油安の衝撃が世界経済を不安に陥れている。
原油相場の下落基調を決定づけたのは11月27日の石油輸出国機構(OPEC)総会だ。約5時間に及んだOPEC総会を終え、記者団の前に現れたサウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は「偉大な決定だ」と、減産の見送りを勝ち誇ったように振り返った。
だが、実際にはOPECの存在感の低下が浮き彫りになった。減産に踏み切れなかったOPECについて、石油連盟の木村康会長は「減産してもマーケットが動かないと判断したのでは」と、OPECが価格決定権を半ば放棄したと指摘する。
原油安で財政が厳しいベネズエラなどが減産を主張したものの、減産に踏み切れば米国の「シェールオイル」がその穴を埋めてしまう。原油価格の調整役だったOPECがもはや価格をコントロールできなくなっている実情を市場が見透かしたことで、原油相場は歯止めを失った。
これまでなら景気が上向きの米国の需要が、原油相場を支えた。だが「シェール革命」によって米国はむしろ原油安の震源へと立場を変えた。
衆院選の大勝で「アベノミクス」の再始動に動き出したばかりの安倍政権も、資源国の経済不安や金融市場の動揺が長引けば、景気回復に冷や水を浴びせられかねない。
政権基盤が安定し、本格的に規制改革や成長戦略の推進に乗り出すアベノミクスにとって、原油下落の「逆オイルショック」をどう乗り切るかが、大きな課題になりつつある。(SANKEI EXPRESS)