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「忍耐が必要」すれ違う思惑 米キューバ首脳 国交回復へ歴史的会談

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「忍耐が必要」すれ違う思惑 米キューバ首脳 国交回復へ歴史的会談

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4月11日、首都パナマ市での首脳会談で握手を交わそうとするバラク・オバマ米大統領(右)とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長。「歴史的な会談」の演出は、抑制的でややぎこちなかった=2015年、パナマ(ロイター)  バラク・オバマ米大統領(53)とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長(83)は11日、訪問先のパナマ市で約1時間にわたり会談し、国交正常化と相互の大使館再開を急ぐことで一致した。両国首脳の会談は59年ぶりで、1961年の断交後初めて。オバマ氏は「歴史的な会談」と意義を強調し、両国は国交正常化に向けて本格的に動き出すが、キューバの人権問題など対立解消のめどが立たないまま先送りされた課題も多い。図らずもカストロ氏は今後の交渉について「忍耐が必要だ」と指摘した。

 遺産作りと経済再建

 会談は率直かつ和やかな雰囲気の中で行われ、オバマ氏はカストロ氏に対し「両国は未来への道を進む立場を共有している。ページをめくり、新しい関係を発展させることは可能だ」と強調した。一方、カストロ氏は「私たちの国は長く、複雑な歴史を持つが、喜んで(米国との関係を)発展させたい」と応じた。

 オバマ氏は会談後の記者会見で、キューバに「体制転換を求めるつもりはない」と明言。「キューバは米国の脅威ではない」と語った。カストロ氏は「あらゆる課題を議論する用意がある」と語り、両国関係は大きな節目を迎えた。ただ、カストロ氏は「説得されて同意することもあるだろうし、同意しないこともあるだろう」と、くぎを刺した。

 米国はキューバを「テロ支援国家」に指定しており、オバマ氏が指定解除を伝達する可能性も取り沙汰されていたが、米政府高官によると「数日中」に判断すると伝えるにとどまった。

 北米、中南米35カ国の米州首脳会議の全体会合が開かれたパナマ市で首脳会談が実現したのは、2年を切った残り任期で大きな業績を残したいオバマ氏と、テロ支援国家指定の解除などを通じ、経済再建への道筋を付けたいカストロ氏の思惑が一致したためだ。

 制裁解除、見通し厳しく

 だが、思惑はすれ違いも目立つ。オバマ氏は、両国関係の改善を通じて貿易や人的交流が拡大し、結果として表現・言論の自由拡大や反体制派の処遇改善など、民主化に向けたキューバの政治的変化も促せるという筋書きを描いている。兄、フィデル・カストロ前国家評議会議長(88)とともに1959年のキューバ革命実現に向けてゲリラ戦を展開した「闘士」の顔を持つカストロ氏は、「われわれは社会主義をより完全なものにするために経済モデルの改善に努める」と述べるなど、現在の政治的枠組みの変化は容認しない立場だ。

 また、カストロ氏が「国民に損害と窮乏をもたらし経済発展を妨げている」として強く求めている経済制裁の全面解除には米議会の承認が必要だが、野党共和党は上下両院で多数派を占めており激しい抵抗は必至だ。

 個人的な信頼関係が命綱

 米国内では、人権改善を迫ることなく、国交正常化に突き進むオバマ政権の姿勢に弱腰批判が強い。キューバ出身の両親を持ち、次期大統領選への立候補が取り沙汰される共和党のマルコ・ルビオ上院議員(43)は「平壌やテヘランの独裁者たちも『残り任期の2年間、オバマ氏の甘さを利用できる』と思うことだろう」とオバマ氏を非難している。

 カストロ氏は米州首脳会議での演説で、「オバマ氏以前の10人の米大統領は、キューバに対し負の責任があるが、オバマ氏は別だ。オバマ氏は誠実な人物だ」と言い切った。個人的な信頼関係こそが命綱であると吐露したに等しいが、ならば時間はそう多くない。完全な関係正常化は見かけほど甘くなく、道は険しい。(SANKEI EXPRESS

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