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クリントン氏 米大統領選出馬表明 ネットに動画「擁護者になりたい」
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4月12日、インターネット上で発表されたヒラリー・クリントン前米国務長官のビデオ声明の映像。外交政策に関する言及は一切なく、穏やかな表情で語りかけ、親しみやすいイメージを演出した=2015年(AP) 米民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(67)は12日、インターネット上で2016年の次期大統領選への出馬を表明した。クリントン氏が大統領選に挑戦するのは、バラク・オバマ大統領(53)に党の候補者指名争いで敗れた08年選挙以来2度目で、米国史上初の女性大統領が誕生するかどうかに注目が集まっている。
クリントン氏は選挙用に新設したウェブサイトに掲載した約2分間の動画で、「普通の米国人はチャンピオン(擁護者)を必要としている。私は擁護者になりたい」と訴えた。
また、子育て世代の家族やヒスパニック(中南米系)などを登場させ「家族が強くなれば、米国は強くなる」と主張。さらに、「米国人は不況期から立ち直るために戦っているが、まだ上位にいる人に有利だ」と述べ、選挙運動では中間層や貧困層を重視する姿勢を鮮明にした。
来年11月8日の大統領選に先立つ民主党の候補者指名争いでは、ジョー・バイデン副大統領、ジム・ウェッブ元上院議員、マーティン・オマリー前メリーランド州知事らも立候補が取り沙汰されているが、クリントン氏は世論調査で民主党支持層の6割の支持を集めるなど指名が最有力視されている。
一方、共和党はテッド・クルーズ、ランド・ポール両上院議員が出馬表明したほか、マルコ・ルビオ上院議員も13日に立候補の意向を明らかにする方針。ブッシュ前大統領の弟、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事も出馬に意欲を見せており、クリントン氏の出馬表明で大統領選に向けた動きが本格化することになりそうだ。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)
≪中間層重視 「脱ウォール街」強調≫
女性初の米大統領の座に再挑戦すると表明したクリントン氏は、出馬表明でオバマ大統領の「中間層重視」路線を継承する立場を明確にし、民主党内リベラル層からの「クリントン夫妻はウォール街(金融業界)寄り」との批判の打ち消しを図るなど、まずは支持基盤固めを徹底させる姿勢を打ち出した。
「皆様からの票を獲得するために出発します。この旅に加わってください」
インターネット動画でこう訴えたクリントン氏が党の候補者指名を勝ち取るには、若者や女性、黒人や中南米などの人種的少数派に加え、党の伝統的支持基盤であるリベラル層を「旅」に加わらせる必要がある。
クリントン氏が「中間層重視」を強調するのは、夫のクリントン元大統領と一緒に行っている慈善活動が、リベラル層から「金融業界や資産家などの富裕層に依存している」と批判を浴びているためでもある。
リベラル層は2008年のリーマン・ショック以降、「反ウォール街」の姿勢を強めてきた。本人は出馬を否定しているが、民主党支持者の間では、ウォール街批判で注目されたエリザベス・ウォーレン上院議員を推す動きもある。
このため、クリントン陣営は富裕層から選挙資金を集めるために開く大規模な集会を当面は控え、有権者と膝詰めで対話する選挙運動を進めていく考えだ。
一方、クリントン氏の出馬表明を受け、共和党は一斉に集中砲火を浴びせた。
自身も出馬が取り沙汰されるジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は12日、「オバマ、クリントン両氏の外交政策は同盟国との関係を傷付け、敵をつけあがらせた」と批判した。
共和党全国委員会も「ストップ・ヒラリー」と題する運動を始め、国務長官時代に公務に私用メールを使っていた問題などを追及する構えを見せる。また、立候補を表明済みのランド・ポール上院議員の陣営は、テレビCMでクリントン氏を「ワシントン政治の権化だ」と切り捨てた。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)