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四分五裂の米議会 大統領候補たちの皮算用
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米議会の分裂状態が複雑さを増している。これまで注目されてきたのは専ら民主党と共和党の対立と、共和党内の穏健派と強硬派との対立だったが、昨年12月の予算法案審議では、これまで一体感を維持してきた民主党内の対立にも焦点が当たった。2016年の大統領選を控え、両党の大統領候補たちは弱気な態度を示すことができない状況がますます強まるという事情もあり、15年も移民制度改革や金融規制緩和をめぐる党内対立が繰り返されそうだ。
「予算法案にはウォール街を利するためだけの危険な条項が紛れ込んでいる」。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(65)は昨年12月12日の上院での予算審議で、予算法案への反対論をまくしたてた。
ウォーレン氏が批判したのはリスクの高い金融派生商品(デリバティブ)取引に関する金融機関への規制を緩和する条項。本来、予算とは関係のない措置だが、共和党が予算法案に付随させることでどさくさ紛れの成立を狙ったものだ。ウォーレン氏はリスクの高い取引に手を出した金融機関が破綻すれば、税金で救済せざるを得なくなると論陣を張った。
ウォーレン氏はこれまでも金融機関批判を展開して喝采を浴び、大統領候補としても名前が挙がる。ただし予算法案は民主党のハリー・リード院内総務(75)ら指導部が暫定予算の期限切れによる政府機関閉鎖を回避するために共和党指導部と合意した内容とあって、ウォーレン氏は民主党指導部に公然と反旗を翻した形になった。
一方、共和党内ではテッド・クルーズ上院議員(44)が予算法案に反対する姿勢を鮮明にした。クルーズ氏は13年秋の予算法案審議でも予算法案の採決を認めずに政府機関閉鎖の一因を作った「常習犯」。米議会ではクルーズ氏ら「右の強硬派」とウォーレン氏ら「左の強硬派」が存在感を増している形だ。
実際、13日の予算法案の採決では、民主、共和両党ともに4割の議員が反対に回った。反対票を投じたなかには、ウォーレン氏やクルーズ氏のほか、共和党内で大統領候補に名前が挙がるランド・ポール上院議員(51)、マルコ・ルビオ上院議員(43)らも含まれている。また民主党と連携する無所属で、大統領選出馬の可能性を明言しているバーニー・サンダース上院議員(73)も反対した。
これらの大統領候補には強硬派を無視できない事情がある。大統領候補にとって党内の予備選を勝ち抜くためには強硬派の支持を得ておくことが重要なうえ、大統領選の本選の段階でも強硬派からの強い支持を得ることができていれば、対立候補との競り合いで有利になることも明らかだ。16年の大統領選に向けた動きは年明け以降活発化する見通しで、大統領候補たちはますます態度を強硬化させる可能性がある。
今回成立した予算法は15年9月まで大半の政府機関が運営できるだけの歳出を認める一方で、移民制度を管轄する国土安全保障省分だけは2月27日までの暫定予算とされた。1月からの議会では、バラク・オバマ大統領(53)が議会を回避して進める移民制度改革の形骸化を狙って、共和党内の強硬派が国土安全保障省の予算の見直しを求めることは確実だ。
しかし1月から上下両院で多数派となる共和党も上院での議事進行妨害(フィリバスター)を阻止できる60議席には届いておらず、民主党の同意なしでは予算を通すことはできない。このため米政治アナリストは「共和党指導部は国土安全保障省分の予算をスムーズに成立させて統治能力を示したいところだが、引き続き共和党内の強硬派と民主党との板挟みになる」と指摘する。
また、春から始まる2016会計年度(15年10月~16年9月)の予算審議でも、共和党が再び金融規制の緩和を盛り込めば、ウォーレン氏らは反発を強める公算が大きい。しかし今回、金融規制緩和を容認したリード氏には、資金集めのためにはウォール街を袖にしたくないという思惑も見え隠れする。さらに民主党の大統領候補として最有力視されるヒラリー・クリントン前国務長官(67)はウォール街との関係の深さで有名だ。
15年秋には民主党の強硬派が震源地となって政府機関閉鎖の危機が広がり、民主党指導部が頭を悩ませる可能性もある。予算をめぐる米国議会の確執は一寸先は闇の状況が続きそうだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)