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共和党大統領候補ら 貧困対策アピール
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2016年の大統領選を見据え、ポール・ライアン下院予算委員長(44)やランド・ポール上院議員(51)といった共和党の大統領候補たちが貧困層への補助金制度の改革など弱者への配慮をアピールする政策案を続々と打ち出している。米国では貧困拡大が依然として深刻な問題だが、小さな政府を志向する共和党は貧困層に冷たいとの印象を持たれることが多い。各大統領候補はこうしたイメージを一新して、大統領選での支持を広げようと躍起になっている形だ。しかし各大統領候補のイメージチェンジ戦略に対する共和党指導部からの反応は薄く、党としての路線変更には至っていないとの見方もある。
「必要なのは苦しんでいる家族に対する足並みのそろった支援だ」。2012年の大統領選で共和党の副大統領候補だったライアン氏は7月24日、ワシントン市内の保守系シンクタンクで貧困対策の改革案を発表して注目を集めた。
ライアン氏はこれまで共和党が多数を占める下院で予算審議を主導し、社会保障関連費用の抑制などによる財政健全化を主張してきた。しかし今回の改革案では貧困層への補助金規模の維持を強調。食料購入補助制度(フードスタンプ)や住宅支援などを統合し、運営時の州政府の裁量を強めるなどの方策で強固なセーフティーネットを目指すと宣言した。
また草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」から圧倒的な支持を受け、自助努力を尊ぶ立場を取るランド・ポール上院議員も7月25日、オハイオ州シンシナティーでの集会で失業率が全国平均の1.5倍以上ある地域に対する大幅減税を実施する政策案を発表。「米国の貧困問題を変化させることができる」とアピールした。
共和党ではこのほか、マルコ・ルビオ上院議員(43)も子育て世帯への経済的支援の強化を主張。またジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(61)も不法移民への共感を示し、不法移民に批判的な共和党のイメージと一線を画す。
背景にあるのは米国での貧困問題の深刻さだ。米国勢調査局の2012年の調査では、連邦政府が定めた貧困ライン(4人家族の場合、年収約2万3500ドル=約240万円)未満の人口の割合(貧困率)は全米で15.0%。00年以降、上昇傾向が続く。なかでも黒人の貧困率は27.2%で、白人の12.7%を大きく上回る。
ブルッキングス研究所が7月末に発表した08~12年の統計データに基づいた調査では、貧困率40%以上の地区の数は全米で3570。00年の2080地区から7割以上も増えた。これらの貧困地区の半数以上は都市部にあるが、郊外での増加率が高い傾向がある。
共和党は医療保険制度改革(オバマケア)への反発を続ける強硬な態度が批判されるほか、貧困問題などについても「オバマ政権の政策に反対するばかりで、具体的な対策を示さない」との指摘も受けてきた。12年の大統領選でも所得が低くなればなるほど再選を目指した民主党のバラク・オバマ大統領(53)に投票する割合が高くなる傾向が明らかだった。
このためライアン氏ら共和党の大統領候補が16年の大統領選で民主党の支持基盤を切り崩すには、貧困対策に背を向けることはできないのが現実だ。各候補が現段階からさまざまな提案を打ち出すことには、政権運営を担えるという実力をアピールする狙いがある。
ただし共和党支持層の一部は財政健全化を強く主張しており、歳出拡大を招きかねない貧困対策への傾斜には抵抗感が強い。ジョン・ベイナー下院議長(64)ら共和党指導部は各氏の対策に目立った反応は示していないのが現実だ。共和党指導部にとって目下の課題は11月に迫った中間選挙での勝利。財政健全化に取り組んでいるイメージを弱めかねない貧困対策をおおっぴらにアピールすることには慎重に成らざるをえないものとみられる。
逆に共和党指導部はオバマ大統領を訴追する動きを見せるなど、オバマ政権との対決姿勢を鮮明にしている。ライアン氏らの懸命のアピールは指導部の強硬姿勢に覆い隠されている面もありそうだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)