SankeiBiz for mobile

エボラ熱拡大阻止へ 渡航制限求める声

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

エボラ熱拡大阻止へ 渡航制限求める声

更新

エボラ出血熱の感染が確認された国=2014年9月5日現在  【アメリカを読む】

 西アフリカで拡大しているエボラ出血熱の感染者が初めて見つかるなどしている米国で、感染源のギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国からの渡航を制限するよう求める声が上がっている。最初に感染が確認されたリベリア人男性からの2次感染も確認されており、米国内での感染拡大の可能性も拭い切れない。当局はエボラ出血熱の抗体の増産準備も進めるなど、拡大阻止に懸命になっているが、不安はじわじわと広がっている。

 議員団が大統領に書簡

 「米国はエボラ出血熱の影響を受けている国々からの渡航を制限すべきだ」。米下院の26人の議員団は10月8日付のバラク・オバマ大統領(53)宛ての書簡で、エボラ出血熱の米国への拡大を防止するための対応強化を訴えた。世界保健機関(WHO)などは渡航制限に否定的だが、議員団は「WHOは大統領とは違い、米国民の生命を守る義務はない。決断の責任を負っているのは大統領だ」と迫っている。

 26人の大半は共和党議員だが、民主党からも3人が加わっており、オバマ氏の足元からも対応への不満が持ち上がっている形だ。上院でも民主党のビル・ネルソン上院議員(72)が「感染国からの不要な渡航や新たなビザの発給を一時的に停止すべきだ」としている。

 米国では9月30日、国内で初めて感染者が確認された。9月中旬にリベリアの首都モンロビアで感染者の女性に接触していたリベリア人男性で、20日に米国に到着。4日後に発熱などの症状を訴え、病院に隔離されて治療を受けていたが、10月7日に死亡した。出国時には「エボラ出血熱の感染者と接触してない」と虚偽の申告をしていたという。さらに12日、テキサス州ダラスの病院でこの男性の治療に関わっていた看護師の女性が、エボラ熱に感染していることが確認された。

 経済への悪影響も懸念

 米国ではリベリア人男性が空路で入国していたことから、2003年の新型肺炎(SARS)の流行時にように、航空客の減少など経済活動への悪影響も取り沙汰されている。感染者確認の翌1日には米航空会社の株価がそろって下落した。

 米疾病対策センター(CDC)は感染者確認の直後から、エボラ出血熱は空気感染しないうえ、発熱などの症状が出るまでは他者に感染することはないと強調。リベリア人男性から空路で感染した可能性はないとして、不安の沈静化に懸命だ。

 オバマ氏も6日、この数カ月で西アフリカから入国した数千人のうち確認された感染者は1人だけであることや米国の医療体制の充実などを理由に、「米国でエボラ出血熱の感染が拡大する可能性は極めて低い」と述べ、冷静な対応を呼びかけた。

 しかし8日には、リベリア人男性が滞在していた住宅に立ち入ったダラス郡保安官事務所の職員がエボラ出血熱に感染した疑いがあることも判明している。住宅に入った際に感染防止用の装備を身に着けていなかったとされ、適切な措置が取られていなかったことが明るみに出た。

 またこのリベリア人男性が発症後に病院に行った際には、男性がリベリアから渡航したことを告げたにも関わらず、エボラ出血熱への感染を疑われることなく、一旦、自宅に戻されたことも分かっている。米国の医療設備が西アフリカとは比較にならないほど充実していることは事実だが、医療機関の対応がまずければ感染拡大を許しかねないのも現実だ。

 検疫体制を強化

 米国内で広がる不安を受け、米国土安全保障省は8日、ニューヨークのケネディ空港など5空港で、3カ国から到着する乗客に対する特別な検疫体制をとると発表した。パスポートの確認後、他の乗客から離れた場所で、専門のスタッフが症状や感染者との接触の有無を確認する。また当局はテキサス州の製薬会社などと協力して、エボラ出血熱ウイルスに効果が期待される抗体の増産の準備を進めている。来年には本格的な増産に入り、西アフリカでの感染拡大阻止に活用したい考えだ。

 一方で、オバマ政権は現段階では、3カ国からの渡航制限には消極的だ。米国内の専門家の間でも「渡航を制限することは西アフリカでの感染拡大という根本的な問題の解決につながらない」との声が出ている。

 しかし、リベリア人男性のケースのように発熱などの症状が出る前に渡航し、検疫でも感染者との接触はないとの虚偽の申告をするような場合は、感染の可能性がある渡航者を防ぐことは難しい。このため「現在の体制が抱える問題から目を背けるのは止めよう」として、より積極的な対応を求める声も出ている。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS

ランキング