SankeiBiz for mobile

研究用チンパンジーに「人身保護令状」 NY州最高裁、人間以外に初

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

研究用チンパンジーに「人身保護令状」 NY州最高裁、人間以外に初

更新

オランダ中部アーネムの動物園で、木の枝で無人機をたたき落とすチンパンジーを、無人機に搭載されたカメラが捉えた映像。チンパンジーが高い知能を持つ証しとして大きな注目を集めた=2015年4月10日(AP)  米ニューヨーク州最高裁は22日までに、州立大学が研究施設で飼育している2匹のチンパンジーについて、不当に自由を奪う「違法拘禁」の可能性があるとして、人間と同じ扱いとなる「人身保護令状」を出した。

 米国で動物に保護令状が出るのは初めて。動物保護団体が「自主性と知能を兼ね備えた動物である」として、2匹の解放を求めていた。最高裁は被告である州と大学側に「飼育の合法性」を立証するよう命じ、5月6日に審理を開くことも決定した。

 昨年12月にはアルゼンチンの裁判所が、動物園で暮らすオランウータンの「人権」を認め、解放を命じる判決を出した。2匹は最終的に「自由」を得られるのか。全米が審理の行方を注視している。

 解放求め団体提訴

 地元紙ニューヨーク・デーリー・ニューズ(電子版)などによると、この2匹は、ロングアイランドにあるニューヨーク州立ストーニーブルック大学が研究のために飼育している雄のレオとヘラクレス。

 訴えを起こしたのは、2007年にフロリダ州で設立された非営利団体「人間を除く動物の権利プロジェクト(NhRP)」で、約250匹のチンパンジーが生息するフロリダ州南部フォートピアスの自然保護区に2匹を解放するよう求めている。

 NhRPは2013年12月に、2匹について、「投獄に対する苦悩」といった極めて複雑な感情の認知能力を有しており、「人間」として認められる資格があるとして、大学があるサフォーク郡最高裁に解放を求めて提訴したが、翌年1月に却下された。

 今回、ニューヨーク・マンハッタンにある州最高裁に今月20日、改めて提訴したところ、バーバラ・ジャフィ判事がその日の夜に、人身保護令状を出した。令状は刑務所などで「不当に自由が奪われている者」を救済するための措置で、人間以外の動物に「人権」を認める米国初の司法判断と受け止める声もある。

 NhRP側のスティーブン・ワイズ弁護士は英紙ガーディアン(電子版)に、「長い長い戦いの始まりだ」と気を引き締めながらも、「いつか認められるとは思っていたが、素晴らしいことだ」と喜んだ。一方、保護令状を出した判事の広報担当であるデビッド・ブックスタバー氏はニューヨーク・デーリー・ニューズ紙に「チンパンジーが人であるとは言っていない」と説明。大学側はメディアにコメントを拒否している。

 ことごとく却下

 米国では、これまで動物の「人権」を認めるよう求める訴訟はことごとく却下されてきた。NhRPがニューヨーク州の動物園で飼われているチンパンジーのトミーについて「人権」の適用と解放を求めた訴訟では、ニューヨーク州高裁が昨年12月に訴えを却下した。人間と違い「人権」を得ることによって果たすべき「法的義務や社会的責任を果たせない」というのが理由で、NhRPは最高裁に上告している。

 これに対し、アルゼンチンの裁判所は同じ昨年12月に、首都ブエノスアイレスの動物園で暮らす雌のスマトラオランウータンのサンドラについて、「人権」を認め、ブラジルの動物保護区に解放するよう命じる判決を下している。

 5月6日の審理で原告の訴えを退けるには、被告側が「飼育の合法性」を立証する必要がある。米国でも知能の高い動物の「人権」を認める流れが定着するのか。(SANKEI EXPRESS

ランキング