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チェチェン紛争 欧州の立場で描きたかった 映画「あの日の声を探して」 ミシェル・アザナヴィシウス監督
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「チェチェン人=テロリストというプロパガンダを払拭し、彼らは血の通った人間なんだと訴えたかった」と語るミシェル・アザナヴィシウス監督=2015年3月18日(ギャガ提供) 第84回米アカデミー賞レースを席巻したフランスの白黒無声映画「アーティスト」のミシェル・アザナヴィシウス監督(48)が、新作のヒューマンドラマ「あの日の声を探して」で描いたのは、凄惨(せいさん)を極める現代のチェチェン紛争の実態だ。
1999年、ロシアがチェチェンへ侵攻。チェチェン人の両親はロシア兵に因縁を付けられた揚げ句、銃殺され、9歳の少年、ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)は、赤ん坊の弟を抱きかかえ、その場から逃亡した。命からがらたどり着いた他人の家の玄関に弟を置いた後、放浪生活へ。精神的なショックで声を失ったハジは、やがて戦況調査でフランスから派遣されたEU職員、キャロル(ベレニス・ベジョ)と出会い、共同生活を始める。
アザナヴィシウス監督は「悲劇的な状況に置かれた人間を常に描きたいと考えています。『アーティスト』もそうでしたね」と映画作りへの姿勢を示したうえで、「これまでチェチェン紛争がフィクション映画で語られたことはなかったし、強いロシアの立場からではなく、無力な欧州の立場から描きたかったのです」と強調した。
もっと言えば、「チェチェンという敗戦国に正義はない」という現実を念頭に、ロシア側とは違う角度から真実に光を当てようという試みだった。「世の中で語られるチェチェン紛争はロシア側が語ったものでしょう。また、欧州で教育を受けた私たちは『戦争で勝った方がいい人』との教えを受けてきました。でも実はそうではないのだと、僕はこの映画で示そうとしました。この映画はアンチ・プーチン(ロシア大統領)プロパガンダです」
この物語には、ロシア軍に強制入隊させられ、次第に殺人兵器と化していくごく普通のロシア人青年(マキシム・エメリヤノフ)の姿も断続的に挿入されている。アザナヴィシウス監督は「戦争が起きたとき、暴力に巻き込まれるのは、被害者ばかりではなく、やがて殺人者になっていくであろう人々も含まれます。私はその両者を語りたかったのです」とその意図を説明した。
もの悲しそうな目で語るママツイエフの奥行きのある演技は圧巻だ。「彼はチェチェン人の素人俳優で、私は450人の候補者から選びました。彼には子役にありがちな、わざとらしさがなく、泣き方や悲しい表情が自然だったからです」
本作は昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門にノミネート。ママツイエフは映画祭への出席を機に、母を故郷に残したまま、政治難民としておじと2人でフランスで暮らし始めた。学校でフランス語を学ぶ彼とメールのやり取りを楽しむアザナヴィシウス監督は、「いつか彼を別の作品で起用するかもしれないけど、彼は役者の職業に関心を示さないんですよ」。東京・TOHOシネマズシャンテほかで公開中。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)
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