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「子育てはスポーツだ!」 日々ドキドキ 萩原智子

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「子育てはスポーツだ!」 日々ドキドキ 萩原智子

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わが子を抱く萩原智子さん=2015年4月24日(本人提供)  【笑顔のアスリート学】

 昨年11月、私にとってビッグイベントがあった。結婚して8年目にして子供が誕生したのだ。現役選手でもあった3年前、婦人科系の病気である「子宮内膜症・卵巣のう腫チョコレートのう胞」と診断された。治療をしなければ不妊症になる可能性が高いと言われ、ショックを受けた。自分自身が納得するまで病院を回り、4カ所目で信頼できるドクターと出合えた。痛みがひどく、のう胞が多臓器に癒着していたこともあり、手術を選択。のう胞を切除した。しかしこの病気は再発するため、新しい命を授かることができるのか、不安で不安で仕方なかった。

 現役を引退し、2年後に妊娠。病院のエコーで、豆粒ほどのわが子を目にしたときは、自然と涙が。わが子が誕生したときの泣き声と抱きしめたときの温かさに、涙が止まらず、同時に感謝の気持ちでいっぱいになった。

 楽しさと大変さ

 出産から約5カ月が過ぎ、育児の楽しさと大変さを体感している。授乳やおむつ替えなど、睡眠時間も少ない毎日を過ごしているが、現役時代の練習に比べたら…耐えられる(笑)。それ以上に、日々、わが子の成長にドキドキワクワクしている。そして、できないことが多いわが子から、教えてもらうことがたくさんある。

 誰でも初めはできなくて当たり前。できないことができるようになったときの満足顔には、こちらも拍手を送りたくなる。水泳の指導でも、できないことができるようになる喜びを感じてもらいたいと、より一層考えるようになった。喜びは、成長へのパワーでもあると思う。

 子育ては、一人の人間を育てること…。当たり前のことなのだが、あらためて、実感する日々だ。楽しみな半面、怖さも感じている。ひとりひとり個性があり、違いがある。人を育てることに正解がないからこそ、迷いも不安もあるのだと感じている。不安が積み重なり、主人に八つ当たりしたことだってある。

 そんなとき、ある方がこんな言葉をくれた。「子育ては、自分自身も一緒に育てていけばいい」と。子供が5カ月であれば、私自身も母になって5カ月。焦らず、母として、子供と一緒にゆっくり成長していけばいいのだと、肩の力がフッと抜けた。

 現役時代に似ている

 最近、「子育てはスポーツだ!」と感じることも多々ある。例えば、抱っこしていると腕と肩、腰が筋肉痛になることもしばしば。抱っこしながら立ち上がることが多かった日は、足も筋肉痛になる。翌日に疲れを残さないように、子供を寝かしつけてからのストレッチや、栄養のある母乳を飲ませるためにバランスを考えた食事。何だか、現役時代の生活に似ているような気もする。義父も実父も、孫を抱っこするために6キロのダンベルで腕を鍛えていると聞いたときは、思わず吹き出してしまった。体を動かすきっかけは、色々なところにあるのだな、と感じている。

 現在、私は仕事に復帰しているが、女性が出産してから社会復帰することへの不安は、やはり大きいと実感した。それぞれの両親にお世話になり、親の偉大さ、あるがたみを改めて感じている日々だ。

 男性が取得することができる「育休」について考えることも。一気に一定期間休むのではなく、1週間に2日、もしくは3日まで休みがとれて、それを1年間続けるといったように、臨機応変に休みを取得できると、仕事のことが心配な男性も、もっと気軽に育休が取れるのではないかと思う。

 現在もさまざまな面で子育て支援が行われているが、もっと柔軟で、それぞれ選択できるような制度ができることを期待している。(日本水連理事、キャスター 萩原智子/SANKEI EXPRESS

 ■はぎわら・ともこ 1980年4月13日、山梨県生まれ。身長178センチの大型スイマーとして、2000年シドニー五輪女子200メートル背泳ぎ4位、女子200メートル個人メドレーで8位入賞。02年の日本選手権で史上初の4冠達成。04年にいったん現役引退し、09年に復帰。子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)の手術を乗り越え、現在は講演・水泳教室やキャスターなどの仕事をこなす。

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