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南シナ海 米、中国埋め立て監視強化 12カイリ内へ艦船進入の可能性「排除せず」

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南シナ海 米、中国埋め立て監視強化 12カイリ内へ艦船進入の可能性「排除せず」

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コンピューター画面を見る米軍のP8対潜哨戒機の乗組員。米海軍が5月21日公表した=2015年(米海軍提供・ロイター)  米政府は、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で人工島を建設している中国に対する牽制(けんせい)を強めている。国防、国務両省は21日、人工島周辺での米軍偵察機などによる警戒監視活動を継続し、国際法で「領海」と定められている12カイリ(約22キロ)以内に、米軍の偵察機と艦船を進入させる可能性を排除していないとの見解を示した。

 「広報活動」も展開

 ラッセル国務次官補は21日の記者会見で「警戒監視活動を続ける。(人工島周辺は)国際海・空域であり、航行の自由の権利を行使する」と強調した。米軍の偵察機は、12カイリの外で警戒監視に当たっている。

 さらに「米軍機が公海上空を飛行できるだけでは十分ではない。シンガポール、タイのパイロットが同様に飛行できるよう望む」と中国に呼び掛けた。

 一方、国防総省のウォーレン報道部長は、12カイリ以内への進入は「次の段階だ。ただ、いつ実施するかなど、何も決まっていない」と述べ、当面は現状を維持するとの見通しを示した。

 国防総省は、メディアを利用しての牽制と「広報活動」も展開し始めた。

 20日には米CNNテレビの取材班をP8対潜哨戒機に同乗させ、ファイアリークロス(永暑)礁周辺などを飛行した。そこへ中国軍機が飛来し、8回にわたり英語で「こちらは中国海軍だ。軍事区域に近づいている。直ちに退去せよ」と警告を発した。

 これに対し、P8の操縦士らは「国際法で認められている公海上空を飛行している」と応酬。こうした様子を収めた映像を、国防総省は21日に公開もした。

 ウォーレン氏は「中国軍機は『防空識別圏』などとは言わず、『軍事区域』とか呼んでいた。これは(国際的に)認知されている用語ではない」と説明し、中国が防空識別圏を設定するまでには至っていないとの認識を示している。

 しかし、中国軍機がすでに、米軍機に対し緊急発進(スクランブル)をかける体制を整えていることは、人工島周辺が実質的に、中国の「領海」「防空識別圏」となりつつある実態を如実に示している。

 「火遊び」批判一色

 中国外務省の洪磊(こう・らい)報道官は22日の定例記者会見で、南シナ海上空で中国軍機が米軍機に退去警告を行ったことについて「米国側の行動はわが国の安全にとって潜在的な脅威となり、地域の平和と安定に大きな損害を与えた。このような無責任かつ危険な行為に対し強く不満を表明する」と抗議した。

 そのうえで、米政府が今後、スプラトリー諸島の12カイリ以内に米軍機を進入させる可能性を表明したことについて、「言動を慎むよう求める。私たちは関係地域に対する監視を密にし、必要に応じて適切な措置を取る」と語り、米側が実際の行動に出た場合、実力による阻止も辞さない態度を示した。

 5月22日付の中国官製メディアも米国批判一色となった。共産党の機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は1面トップで「米軍偵察機の火遊び」と題する長文記事を掲載し、「米国防総省が南シナ海の緊張をつくった」と一方的な主張を展開した。(ワシントン 青木伸行、北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

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