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米キューバ首脳握手 きょう初会談 オバマ氏 反米感情を緩和、露中に楔
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米州首脳会議の議場で握手を交わすバラク・オバマ米大統領(左)とラウル・カストロ国家評議会議長(右から2人目)。国連の潘基文事務総長(右)が見守っていた=2015年4月10日、パナマ・首都パナマ市(ロイター) バラク・オバマ米大統領(53)とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長(83)は10日午後、パナマ市で開幕した米州首脳会議に参加し、対面した2人はあいさつし握手を交わした。ローズ米大統領副補佐官によれば、11日には1961年の断交後初となる両首脳間の直接協議が行われる見通しだ。
副補佐官は10日の記者会見で「(2人は)議論するために(11日に)確実に会うことになる」と述べた上で、「2人の指導者は、国交正常化や大使館設置に向けた問題を解決できる能力を持っている」と強調した。公式の会談になるかどうかは不明だ。米国務省は9日、キューバのテロ支援国家指定の見直し作業を完了しており、オバマ大統領はカストロ議長に対し、指定解除の方針を伝える可能性がある。
一方、キューバ外務省は10日、ジョン・ケリー米国務長官(71)とキューバのブルノ・ロドリゲス外相(57)が前日深夜、国交正常化と大使館設置問題などをめぐって、3時間近くも協議したことについて「互いに敬意を払い、建設的だった」と好意的な見解を示した。両者は他の問題についても「継続して協議する」ことで一致したという。
米キューバ間交渉は、会議に参加した首脳からも歓迎された。南米コロンビアのファン・マヌエル・サントス大統領(63)は「(中南米諸国に支障となっていた)“まめ”が治癒されることになる」と強調。会議議長を務めたパナマのファン・カルロス・バレラ大統領(51)も「(米国の)対キューバ政策は私たちにとっても重みがある」とたたえた。(パナマ市 黒沢潤/SANKEI EXPRESS)
≪オバマ氏 反米感情を緩和、露中に楔≫
オバマ米大統領にとって、今回の米州首脳会議出席とキューバのカストロ国家評議会議長との直接協議に臨む主眼は、米国の「裏庭」である中南米地域との関係を強化することで、根強い反米感情を緩和し、地域を「侵食」するロシアと中国を牽制(けんせい)して楔(くさび)を打ち込むことにある。
オバマ氏はパナマに先立ち訪問したジャマイカで9日、市民対話集会で南シナ海の領有権問題を持ち出し、「フィリピンやベトナムが中国ほど大きくないからといって、黙って小突かれていいわけがない」と中国を批判。返す刀で、中国の中南米に対する支援強化に「どのような条件が付いているのか、注視した方がいい」とくぎを刺した。
10日にはパナマのバレラ大統領との会談で、エネルギー問題など地域と米国は多くの共通の課題を抱えており、「米国は地域諸国と連帯している」とアピールした。
中南米地域では1990年代末以降、反米を掲げる左派系の政権が次々と誕生し、それに乗じるように中国が浸透してきた。米国への敵対姿勢を強めるロシアもこのところ活発な動きを見せ、キューバやニカラグア、ベネズエラなど8カ国に軍事拠点を置くべく、各国と交渉しているとみられている。
そこへ、米国が影響力の回復を図ろうとする構図だ。ベネズエラの経済危機を主要因に、代表的な反米4カ国であるキューバ、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアのうち、キューバとボリビアが米国との距離を縮め始めている。
オバマ大統領にとり、カストロ議長との会談も、「雪解け」を中南米諸国首脳の前で演出し、米国の求心力を高めるという効果がある。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS)
≪カストロ氏 最大限の譲歩狙う≫
キューバのカストロ国家評議会議長が11日、米州首脳会議開催と並行してオバマ米大統領と会談に臨むのは、多くの首脳が注目する歴史的な二国間会談の中で、オバマ氏から最大限の譲歩を引き出したい狙いがあるためだ。
任期残り2年を切ったオバマ氏にすれば、キューバ政策で歴史的成果を上げておきたいのが実情。こうした中、米国にキューバ大使館を置くのと引き換えにハバナに米大使館を設置する問題をめぐり、外交官の「移動の自由」実現などを目指す米国を牽制(けんせい)することが可能となる。
政権転覆に結びつきかねない米側の活動を極力封じ込めたいキューバ側にとって、今回の交渉の舞台は「功を焦るオバマ氏に一定の要求をのませる格好の機会」(外交筋)といえる。
米州首脳会議には多くの反米左派の首脳が集結しており、米国への圧力も期待できる。世界の超大国を相手に半世紀以上持ちこたえてきたと自負するキューバだが、パナマ入りしてさっそく「中南米への米国の侵略を許さない」などとかみ付いたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(52)らは力強い存在だ。(パナマ市 黒沢潤/SANKEI EXPRESS)