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“郷愁”頼みのハリウッド映画 続編花盛り…中高年に訴える作品増える
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ユニバーサル・ピクチャーズが公開した「ジュラシック・ワールド」のシーン。前評判は芳しくなかったが、ふたを開けてみると、予想外の記録的な滑り出しとなった=2015年(AP) 世界約60カ国・地域で先週公開された米ハリウッドの娯楽大作映画「ジュラシック・ワールド」が、12~14日の週末3日間に5億1180万ドル(約630億円)の興行収入を上げ、歴代最高額を記録した。
1993年に公開された大ヒット映画「ジュラシック・パーク」シリーズの第4作だが、公開前は米メディアから酷評されていた。
予想外のヒットの最大の理由は、「ノスタルジー(郷愁)」。第1作を見た人たちが懐かしさから劇場に押し寄せたという。ハリウッドでは、若者の足が劇場から遠のくなか、「昔の名前」に頼った安易な続編やリメークが花盛りを迎えている。
「桁外れの成功だ。この作品は世界中のファンの心を共鳴させた」
製作・配給元の米ユニバーサル・ピクチャーズの国内配給部門のトップ、ニック・カーポウ氏は14日、AP通信にこう語り、驚きを隠さなかった。
米調査会社ボックスオフィス・モジョによると、10~12日にかけて公開され、最初の週末3日間の世界興収が推定5億ドルを超え、これまで首位だった2011年公開の「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」(4億8320万ドル)を抜いた。12日に4274館で公開された米国では2億450億ドルを稼ぎ、12年の「アベンジャーズ」(2億740万ドル)に次ぐ歴代2位となった。日本公開は8月7日。
最終的な世界興収が9億ドルを超え、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督(68)作品として最大のヒットを記録した第1作の22年後が舞台。蚊の血液から採取したDNAによってよみがえった恐竜たちに破壊された「ジュラシック・パーク」が、「ジュラシック・ワールド」として復活したが、再び恐竜たちが大暴れするという内容。
スピルバーグ監督が製作総指揮を務め、新進気鋭のコリン・トレボロウ監督(38)を抜擢(ばってき)。製作費1億5000万ドルを投じた超大作だ。
だが公開前の評価は散々。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、批評家たちは「ヒールを履いた女性科学者が2時間恐竜から逃げ回るだけ」「物語性に乏しくキャラクターに魅力がない」「企業名や商品名がやたらと登場し宣伝だらけ」といった辛辣(しんらつ)な声を浴びせた。米経済誌フォーブス(電子版)も「1作目を知る観客の期待には決して応えられない」と、完全な“駄作”扱い。
このため、アナリストによる米国での最初の週末の興収予想も1億2500万ドルにとどまっていた。ところが、ふたを開けると、興収はその倍に。
ユニバーサルのカーポウ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)に「米国ではチケット購入者の61%が25歳以上で、幼い頃、両親に連れられて第1作を見た世代。その世代が親となり子供を連れ、家族総出で楽しんだ」と話し、自身も予想しなかったヒットの理由を分析してみせた。
実際、シリーズ第2、第3作は第1作とは別の物語が描かれたが、今回の第4作は第1作の続編という位置づけ。「その後」を強調し、郷愁を誘う宣伝を展開したことも奏功した。
これまでもハリウッドは安全策としてヒット作の続編に頼る傾向にあったが、ネット視聴に忙しい若者の劇場離れが加速するなか、中高年の郷愁に訴える作品がさらに増えている。
特に、今年は年末に公開を控える「スター・ウォーズ」を筆頭に、「マッドマックス」や「ターミネーター」といった続編がめじろ押し。興行的に成功しても、新たな感動を呼ばない作品ばかりでは、ハリウッドの未来は暗い。(SANKEI EXPRESS)