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アベノミクスに“落とし穴” 相次ぐ「入札不調」
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2012年度補正予算の柱は、地方自治体向け交付金などを含め、5兆円規模となる公共事業費だ。しかし、建設業界の人手不足や建設資材の高騰の影響で入札参加者が足りずに落札者が決まらない「入札不調」が相次ぎ、着工が遅れている。「三本の矢」の一つである財政出動がうまく機能しなければ、「アベノミクス」の景気浮揚効果に対する懸念が高まる恐れもある。
首都圏のある自治体が最近実施した公共施設の入札は「不調」に終わった。参加を断念した地元の建設業者は「資材や人件費の上昇はバブル期並み」と表情を曇らせる。工期中にも高騰が続けば、赤字を出すのは避けられない状況という。
建設業界はこれまで、公共事業の削減や景気低迷への対応でリストラを加速させてきた。国土交通省の調べでは、11年度末の建設業者数は約48万と、ピーク時の1999年度末から20%減ったほか、高齢化も進んでいる。このため、老朽化した橋やトンネルの補修・点検など、急増した公共工事に対応する余裕がない。
一方で、東日本大震災による復旧・復興工事が東北3県に集中しており、熟練工や建設資材の争奪も激しくなっている。建設物価調査会や国交省の調べでは、仙台市の生コンクリートの価格は2月時点で震災前の4割以上も高騰。昨年4月から今年1月までの「入札不調」の割合が49%にものぼっている。
資材の高騰や人材不足の影響は、準大手以下のゼネコン(総合建設会社)の業績を圧迫し始めている。準大手の戸田建設は13年3月期の業績予想について、連結最終損益を当初の385億円の赤字から630億円の赤字へと下方修正し、井上舜三社長が引責辞任に追い込まれた。井上社長は会見で「見通しが甘かった」と唇をかんだ。
26日の参議院予算委員会で、民主党の桜井充政調会長は、補正予算について「被災地の復興や真の経済再生につながるか疑念が強い」と批判した。政府は「アベノミクス」の思わぬ“落とし穴”にどう対処するのかが問われている。