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政治も経済も綱渡りの中国 右か左か…習指導部どちらに向かっているのか

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政治も経済も綱渡りの中国 右か左か…習指導部どちらに向かっているのか

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【上海摩天楼】

 3中総会、11月開幕

 毛沢東が発動したプロレタリア文化大革命の混乱に終止符を打ち、中国共産党がトウ小平の主導で改革開放と経済成長路線に大きくかじを切って、中国を世界2位の経済大国に押し上げる礎となった1978年12月の第11期中央委員会第3回総会(3中総会)。習近平指導部は北京で来月開催する第18期3中総会を、この35年前の3中総会になぞらえているかもしれない。

 3大改革の不安要因

 昨年11月の共産党大会で総書記に就任し、今年3月の全国人民代表大会(全人代)で国家主席にもなった習氏。関係筋によると、習氏とその指導部が3中総会で打ち出す次なる基本路線には3つの大きな柱がある。

 まず「市場メカニズム重視の経済改革」。トウ小平が35年前に目指した改革開放路線では、香港に接する広東省深セン市などを経済特区として指定し、製造業を中心とする外資導入の実験を行った。豊富で安価な労働力を生かした製造業は輸出を軸に急成長を遂げ、「世界の工場」と呼ばれるまでの成功を収めた。

 その第2幕を目指して、習指導部はまず上海市で規制緩和を区域限定で進める「自由貿易試験区」を指定。人民元の資本取引の認可など、金融やサービス業などでの規制緩和を宣伝材料に、再び外資を誘致する方針を3中総会で正式に打ち出す。上海市での成果を踏まえ、規制緩和対象地域を全土に広げる。

 次に「経済構造改革」。(1)国有商業銀行の簿外融資などグレーな資金で不良債権化の懸念がある「シャドーバンキング(影の銀行)」問題(2)これにリンクする不動産バブル問題(3)固定資産税や相続税がなく、富の再配分が進まない不健全な税制問題-に大ナタを振るうという。

 そして「反腐敗」だ。収賄や横領、職権乱用などの罪に問われている薄煕来・元重慶市共産党委員会書記(元政治局員)への厳正な裁判で“本気度”を示す一方、3中総会で、法院(裁判所)を政府や共産党の組織から分離させ、最高人民法院(最高裁)の管轄下にする「司法の独立」を打ち出す見込みだ。共産党幹部の思惑で判決までゆがめられていた現実が、腐敗の温床にもなっていたとされる。

 いずれも聞こえは良い。この路線通り改革が進めば、トウ小平もあの世で喜ぶだことだろう。だが、どこまで実効性を伴う路線となるのか不安要因もある。

 共青団VS太子党

 習指導部にあって経済政策を仕切るトップは李克強首相。李首相は前総書記兼国家主席の胡錦濤氏と同じ改革派の共産主義青年団(共青団)出身で、自由貿易試験区の設置やシャドーバンキング問題への対応など、経済改革路線で指導力を発揮してきた。トウ小平の流れをくんでいるといっていい。中国で改革派は右派とされる。だが、習氏は党幹部の子弟でつくる太子党の出身。反腐敗は主導しているものの、政治的な発言や行動は守旧派(左派)に近いようだ。

 習仲勲元副首相を父に持つ習総書記は、共産党幹部養成の中央党校で「改革開放前の30年の歴史(文革を含む毛時代)を否定することはできない」と講話した。メディアやインターネットの情報規制を強化し、歯車を逆回転させるかのような言論統制も実行。対日関係では妥協しない頑(かたく)なな姿勢を続ける。

 日中関係は以前、政治的には冷たいが、経済交流は熱い、との意味から「政冷経熱」と呼ばれたが、この用法を習指導部の路線に当てはめれば「政左経右」となる。すなわち政治面では習氏が左を向き、経済面では李氏が右を向く。結局、習指導部が右か左か、どちらに向かっているのか、判然としない。

 一例を挙げれば、「自由貿易試験区」の上海での9月29日の設置式典に、当初は出席予定だった李首相が姿を見せなかった。規制緩和に反発する「国内の既得権益層との調整がつかず、李首相は守旧派に配慮して欠席した」(関係筋)という。スタート時点からして“股裂き状態”にあるとみてもいい。

 こうした事態を、みずほコーポレート銀行(中国)の細川美穂子主任研究員は「(左派と右派をにらんでの)習氏の絶妙なバランス感覚」と受け止めている。その通りだとしても、政治も経済も綱渡りの中国で習指導部がバランスを崩さず、3中総会を起点に中長期的に改革を実行していけるかどうか。予断を許さない。(上海 河崎真澄)

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