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コメ政策大転換、保護優先脱却 減反廃止を決定、自由競争促進
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政府は26日、コメの生産調整(減反)を5年後をめどに廃止することを決め、減反の導入以来、約半世紀ぶりのコメ政策の大転換に乗り出した。同日開いた「農林水産業・地域の活力創造本部」(本部長・安倍晋三首相)で、減反や農業補助金の見直しを正式決定した。生産量を絞って価格を維持する減反を2018年度をめどに廃止し、農家の自主的な経営判断を後押しする。一方で、集落農業を対象にした交付金「日本型直接支払い」を創設し、農地や農村の維持を目指す。
安倍首相は会合で、「農業の構造改革を進めて成長産業とし、農業・農村の所得増加につなげる」と述べた。政府は減反廃止などを盛り込んだ抜本的な農業強化策を年内に策定する。
補助金では、減反に参加した農家への10アール当たり1万5000円の定額補助金を14年度から7500円に半減し、18年度になくす。コメの販売価格が平年価格から下回った差額すべてを公費で穴埋めする変動部分は14年度に全廃する。
日本型直接支払いは、現行制度を衣替えする「資源向上支払い」に加え、新たに水路管理などを支援する「農地維持支払い」を導入。両方の支払いを受ければ、水田10アール当たり最大5400円となり、現行制度から1000円の増額になる。
政策転換は、コメ農家の保護を優先する農政から脱却し、農家に自由競争を促して農業を成長産業に育てるのが狙いだ。ただ、急速な政策転換についていけず耕作を放棄する農家が続出する心配は拭えず、政府は新たな政策にどう「軟着陸」させるかが課題になる。
1970年に始まった減反はコメの作る量を減らして値段が下がらないようにし、コメ農家の生活を守る仕組み。自由にコメを作れないため、「農家のやる気をそぐ政策だ」との批判は常にあり、これまでも政府は段階的に見直してきた。民主党政権時代の2010年度には、生産調整目標を達成できない場合の罰則を全面的に廃止し、農家に補助金を支払うことで減反に誘導する方式に変更した。
それでも、抜本的な廃止にまで踏み込まなかったのは、選挙で農業票を失うことを恐れた与党の意向も大きい。
今回の政策転換は、従来の政策を続けていては、国内農業がじり貧になるとの危機感がもはや無視できなくなるまで広がっていることを意味する。国内農業は、日本人の食生活の変化で減反を強化してもコメ消費の減少に追いつかない「イタチごっこ」が続いている。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の妥結をにらみ、海外から安い農産品が流入しても、対抗できる経営体力の強い大規模農家の育成が急務となっていることも今回の政策転換の背中を押した。
減反廃止は、生産面積を広げて収益を上げたい農家には追い風になる。さらに政府は都道府県ごとに新設する「農地中間管理機構」に、狭い農地を集めて、意欲ある農家や企業に貸し出す仲介役を担わせる計画だ。
ただ、コメの生産量の枠に縛られなくなった結果、農家がコメを作りすぎて価格が暴落する懸念は強い。政府は農家に適正な生産量を決定してもらうため、参考となる需給見通しを示す方針。加えて、これまでコメ生産の中心だった主食用米から需要増が期待できる飼料用米などへの転作を促す補助金も拡充する。
農地の大規模化が難しい山間地や高齢の零細農家が減反廃止で打撃を受ける恐れも否めない。政府が農地保全を目的に新たな補助金「日本型直接支払い」を創設するのもこのためだ。
農林水産省は補助金の見直し後、農業で生計を立てている世帯が多い集落の所得が全国平均で13%増えるとの試算を示しているが、これは飼料用米の生産が大幅に増えることが前提だ。山間地の農家の中には飼料用米の工場が近くになく、転作が難しい状況もある。
今回の政策転換がかえって国内農業の土台を崩す結果とならないよう、政府は今後、生産現場の動向を慎重に見極めていく必要がある。