ニュースカテゴリ:政策・市況
海外情勢
カンボジアで広がる洪水被害 水田1割冠水、農業成長に打撃
更新
人の腰まで水位が上がった村。船で行き来する人も=カンボジア西部バッタンバン州(シャンティ国際ボランティア会提供) カンボジアで洪水の被害が広がっている。9月半ばから同国北西部を中心に浸水などが広がり、10月中旬現在、洪水による死者は160人超にのぼり、全24州のうちプノンペンを含む20州が影響を受けた。ほとんどの州で、上昇した水位は下がり始めているものの、台風の接近など今後の天候次第では状況が悪化する可能性もある。カンボジア政府や在カンボジアの国際機関は緊急支援に乗り出している。
カンボジア政府災害対策委員会などによると、10月半ばまでに全国で168人が死亡。多くの子供たちが含まれているという。約2万7000世帯、12万人が浸水や家屋倒壊などにより避難を強いられ、合計で約174万人が何らかの被害を受けた。
農業や家畜への被害も相次いでいる。国連や非政府組織(NGO)、国際機関などで構成する「カンボジア人道対策フォーラム」のまとめによると、全国で田植えの終わった水田約255万ヘクタールのうち、約1割に当たる約24万4500ヘクタールが冠水などの影響を受け、さらに約2万4000ヘクタールは壊滅的打撃を受けているという。
9月初旬に発表されたアジア開発銀行(ADB)の経済成長予測は、カンボジアの農業セクターについて4%の順調な成長を見込んでいるが、洪水によるダメージが懸念される。
また、コメ以外の主要産品であるキャッサバなどの農地も1万1000ヘクタール以上が被害を受けた。カンボジアのキャッサバは洪水の影響を受ける以前の今年前半、輸出量が激減している。主要輸出先のタイに余剰があったためで、輸出額も今年1月から8月までで1510万ドル(約14億8000万円)となり、前年同期と比べ半減した。洪水の被害でキャッサバ農家はさらに打撃を受けそうだ。
カンボジアは2011年にも深刻な洪水被害に見舞われた。11年の洪水は、タイ、ベトナムなど広範囲にわたり、史上最悪規模の被害を出した。カンボジアでは全国で250人が死亡、農作物やインフラへの被害額は5億ドル以上に及んだ。
今回の洪水も、カンボジア国内では11年に匹敵する規模といわれ、タイと国境を接するバッタンバン州やバンテアイミエンチェイ州では11年の洪水よりも厳しい状況とされる。特にバッタンバン州は、州内14郡のすべてが被災し、多くの世帯が避難しているという。
同州で緊急援助を開始した日本の公益社団法人「シャンティ国際ボランティア会」によると、州内の一部の村では、ダムの決壊を避けるために実施した放流で大洪水が発生。同会がテントや米の緊急配布をしたほか、調査を継続しており、寄付を呼びかけている。
洪水の長期化で衛生面での不安も広がっている。地元紙の報道によると、プノンペンのカンタボパ小児病院には連日数千人の子供が訪れており、1日で4200人にのぼったこともあった。無料で治療が受けられるため、地方からやってくる患者が多い。同院の医師によると、下痢や呼吸器系の症状が多く、洪水の影響が大きいとしている。また、モンドルキリ州などではインフルエンザの流行が報告されている。(月刊邦字誌「プノン」 編集長 木村文)