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日の丸ゼネコン、地下鉄着工 ジャカルタ、渋滞解消の切り札期待
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地下鉄工事のため白い壁で区切られたタマリン通り=ジャカルタ(「じゃかるた新聞」高橋佳久撮影) ジャカルタは朝夕の交通渋滞がすさまじい。1時間で行けるところを3、4時間はざらだ。半日の仕事も1日がかり、物流も他国なら1日2往復が可能なのに1往復しかできない。渋滞による経済的損失は年間68兆ルピア(6120億円)という民間の試算もある。
そんななか、渋滞解消の切り札と期待される地下鉄工事が日本のゼネコン(総合建設会社)を中心に始まった。
インドネシアの首都ジャカルタの人口は2010年の統計で約960万人。アジア有数の大都市にもかかわらず、これまで地下鉄が開通していない。人々は地上で移動するしかなく、1日に700万人が都心を行き交い、200万台の車が走る。道路は車やオートバイであふれかえっている。人口がほぼ同じ規模の東京で地下鉄がなければ、地上の道路はどんな状況になるのかを想像すると混雑ぶりが思い浮かぶだろう。
ジャカルタにも20年前から地下鉄の建設計画はあった。だが、いろいろな事情で延び延びになっていた。例えば、雨期のジャカルタ名物といわれ、道路が膝や腰まで冠水するほどの洪水に見舞われると、地下ホームに濁流が押し寄せて大惨事になることを理由に反対を唱える向きもあった。
紆余(うよ)曲折の末に、ジャカルタの地下鉄は今年、国際協力機構(JICA)の円借款事業としてやっと着工にこぎつけた。まずは南北線の第1期15.7キロメートルが対象で、地下鉄と高架鉄道から成り、地下に6カ所と高架部分に7カ所の計13駅が設置される。総事業費は1570億円、開通は18年の予定だ。
地下区間はジャカルタ中心部を南北に貫くスディルマン通りの下を走る予定で、清水建設、大林組、三井住友建設がインドネシアの企業と組んで建設工事を落札した。郊外の高架区間は東急建設がインドネシア国営企業とともに落札している。
今年1月から順次着工。スディルマン通りは片側3~5車線だが、地下鉄工事にともない1月から街路樹の伐採やガス管の移設工事で車線が減っている。中央分離帯が白い壁で囲われ、4月の本格着工の準備も進む。将来的には、この南北線を北へ伸ばす第2期工事や、2本の東西線の建設も行われる予定だ。このほか、2本のモノレール建設計画もあるが、工事が中断しており、ジャカルタ特別州が工事再開を模索している。
問題は、開通までの4年間、駅の建設地などあちこちで1車線減るため、渋滞がさらに悪化することだ。
しかし、道路構造を改善すれば、部分的に渋滞を解消できることもある。
モデルケースとなっているのが南ジャカルタのマンパン交差点だ。中央分離帯を削ってUターン地点を移動させただけで渋滞が77%も減った。平均通過時間も18秒から8秒へと半分以下に軽減されている。この交差点改良工事は、日本政府とトヨタグループが「草の根・人間の安全保障無償資金協力」の一環として総額1500万円の予算を折半して行われた。
こうした小さな工事で大きな成果が得られる取り組みにも、日本の政府や企業が積極的に後押ししていくことを、地元住民は期待している。(インドネシア邦字紙「じゃかるた新聞」編集長 臼井研一)