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脱デフレ「何でもやる」 日銀・黒田総裁、講演で決意
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東京都内で講演する日銀の黒田総裁=5日午後 日銀の黒田東(はる)彦(ひこ)総裁は5日、東京都内で講演し、「物価安定の目標を早期に実現するため、できることは何でもやる」と繰り返し、デフレの克服に向けた強い決意を改めて表明した。10月末の追加金融緩和の決定後、世界中のマーケットから注目を集める黒田総裁の発言。講演では、日本経済や物価の情勢について、従来通りの見解を示したが、意表を突いた「サプライズ追加緩和」の意図を読み解くフレーズもいくつか飛び出した。(米沢文)
「消費税率引き上げ後の消費の落ち込みを受けて再び低価格戦略を志向する動きが広がらないか、注意する必要がある」
4月の消費税率引き上げ後、実質所得の目減りが続いている。黒田総裁のこの発言は、需要喚起のために企業が低価格戦略を打ち出し始めれば、デフレに回帰する可能性があるとの懸念を示したものだ。黒田総裁は講演で、今後の企業の価格設定行動について「付加価値を高めつつ、販売価格を引き上げる戦略に切り替える動きが続く」との見通しを示したが、その根拠は示さなかった。
「物価安定目標を実現するために必要になれば、躊(ちゅう)躇(ちょ)なく調整を行う方針は従来と何ら変わりはない」
足元の日本経済について、黒田総裁は「緩やかな回復を続けている」と強調した。昨年4月に大規模な金融緩和策を導入して以降、日本経済はデフレ脱却に向けた道筋を順調にたどっているとの考えだ。ただ、欧州経済が鈍化するなど、世界経済の先行きが弱含んでいることに加え、原油価格の大幅下落が日本経済に影響を与える可能性も指摘。今後、日本経済が下ぶれるリスクが出てきた場合は、さらなる追加緩和も辞さない構えだ。
「われわれは『物価が上がりさえすればよい』と思っているわけではない」
今回の決定会合で、日銀は「平成27年度を中心とする期間に、2%程度の物価上昇率を安定的に達する可能性が高い」との強気の物価見通しを維持した一方、26年度の経済成長率見通しを7月時点の1・0%から0・5%に引き下げた。市場からは「成長率が高まらないのに、物価だけが上昇するのは望ましくない」といった批判も噴出。黒田総裁はデフレ下では企業や消費者がリスクを取りたがらず、賃金抑制や消費低迷といった経済の悪循環が続くことを懸念。その上で、企業や消費者の心理を「物価が緩やかに上がりそうだ」という方向に向かわせることで、経済の好循環を促そうとしている。
「デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲みきる必要がある」
黒田総裁は増税の影響の長期化や原油価格の大幅下落により、「これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」と懸念する。追加の金融緩和はこうしたリスクを取り除くための措置であるとして、市場に理解を求めた発言といえる。