SankeiBiz for mobile

追加緩和か物価目標修正か…エコノミストの意見二分 2%達成は至難の業

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

追加緩和か物価目標修正か…エコノミストの意見二分 2%達成は至難の業

更新

 日銀が21日に2015年度の消費者物価指数上昇率の見通しを前年度比1.0%に大幅下方修正したことで、「2年で2%」の物価目標はほぼ不可能となった。それにもかかわらず、追加の金融緩和に踏み切らなかったのはなぜか。また日銀は今後、追加緩和に踏み切るのか、それとも目標の修正に動くのか-。「日銀ウオッチャー」と呼ばれる金融政策担当エコノミストの見解もさまざまだ。

 賃上げ頼み?

 「賃上げ交渉の動きをみても、企業や家計がデフレマインドに戻る懸念は払拭されている」

 黒田東彦総裁はこの日の会見でこう強調し、「15年度を中心とする期間」の物価目標達成は変更しなかった。

 今春闘で給与水準を一律に底上げするベースアップ(ベア)が昨年実績(産業界全体で0.4%)を上回る期待が高まっているのは追い風だ。

 昨年10月末の追加緩和のきっかけとなった原油安についても、「目先は物価を押し下げるが、中長期的には経済活動の改善を通じて物価を押し上げる」と軌道修正した。日銀によると、「1.0%の物価見通しはあくまで15年度の平均値」。それでも、同年度中に2%に引き上げるのは至難の業だ。

 SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「春闘で賃上げが進んでも原油安を補うまでにはいかない」と分析し、10月に追加緩和すると予想する。

 これに対し、「もう緩和マネーは十分。2年で2%の物価目標を断念する」とみるエコノミストも少なくない。長期金利が連日最低を更新し、国債を大量に購入する金融緩和の副作用懸念も高まっている。

 5年国債募集中止

 20日には、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが初の0.1%台を記録。5年債も初のマイナスとなった。これを受け、財務省は21日、個人向け5年物国債の1月分募集を初めて中止すると発表した。

 日銀は、成長分野などへの融資を増やした金融機関に年0.1%の低利資金を供給する「貸出支援基金制度」の拡充・延長を決めたが、同制度の支援期間は4年。既に5年物国債の利回りがマイナスとなる中、効果には疑問符がつく。「金融緩和は限界にきている」

 東短リサーチの加藤出チーフエコノミストはこう指摘する。

 このため、農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「2年の期限を曖昧な表現にして先送りする」と見込む。

 実際、黒田総裁はこの日の会見で、2%到達が16年度にずれ込む可能性を初めて示唆するなど、珍しく弱気な姿勢もみせた。

 ただ1月中旬、スイス国立銀行(中央銀行)が急に為替介入を終了したことで金融市場が大混乱に陥ったように、“弱気”の政策変更は市場心理を一気に冷やしてしまう恐れもある。

 昨年10月末の追加緩和のように、再びサプライズはあるのか。黒田総裁の「決断のとき」を市場は固唾をのんで見守っている。(藤原章裕)

 ■追加緩和をめぐるエコノミストの予想(エコノミスト名/理由と具体的見通し)

 ≪あり≫

 SMBC日興証券・宮前耕也氏/物価見通しを大幅に下方修正したため当面は様子見し、10月に実施

 JPモルガン証券・足立正道氏/審議委員の交代を見極めて7月に実施

 みずほ証券・上野泰也氏/「戦力の逐次投入」はせず、ぎりぎりまで見極めて10月に実施

 ≪なし≫

 大和証券・野口麻衣子氏/緩和は限界に近づいている。「2年」の期限をぼやかす

 農林中金総合研究所・南武志氏/もう十分緩和している。「2年」の期限を先送りする

 三菱東京UFJ銀行・石丸康宏氏/国債買い増しは困難。「2年」の期限を1~2年先送り

ランキング