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安定供給確保、送電網増強を推進 「電力広域機関」あす発足
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送電線の器具を交換する作業員。4月に発足する電力広域機関は送電網の増強などを推進する=三重県桑名市 電力改革の第1弾として、全国規模で電力の需給調整を行うための司令塔となる「電力広域的運営推進機関」が4月1日、発足する。1年後の電力小売り全面自由化を視野に新電力が増え、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入も進む中、送電網の増強という大きな課題に早くも直面することになる。
広域機関は、電力会社からの出向者など約120人体制で発足し、新電力など約600社が加盟予定。政策研究大学院大の金本良嗣副学長が理事長、東京電力、電源開発(Jパワー)、新電力のエネットの出身者が理事に就任する。全国の送電網の運用を日々管理してきた電力系統利用協議会(ESCJ)から設備を譲り受けて活用する。
発足の背景にあるのは、東日本大震災直後に生じた電力不足の苦い「教訓」だ。西日本から東日本に十分な電力が送れず、東電管内では地域ごとに日時を区切って電気を止める「計画停電」を実施した。
ESCJは、送配電業務をあくまでも支援する立場だったが、広域機関はより強い権限を持つ。災害などで電力需給が逼迫(ひっぱく)する緊急時に、電力会社に地域間の電力融通を命令するほか、平常時でも送電設備の増強を電力会社に指導するなど電力の安定供給を確保するのが仕事だ。
2012年7月の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の導入後、太陽光発電が急増しており、送電網の増強は避けて通れない状況だ。広域機関は、加盟者に供給計画と長期の需要予測などを提出させ、送電網の整備計画を決める。
ただ、全国規模の送電網の増強には数兆円ものコストがかかるとされる。広域機関は誰がどのように、こうした費用を分担するかなども決める。
大量の電気を売りたい発電会社と、コストを極力抑えたい小売会社は利害が対立する。広域機関が利害の調整役となるが、電力幹部は「そう簡単な仕事ではないだろう」と指摘する。
電力改革は、第2弾の電力小売り全面自由化は16年4月、電力会社の送配電部門を別会社化する第3弾の「発送電分離」は20年4月の予定だ。
広域機関が送電網をうまく管理、整備できなければ、大規模停電が起きたり、電力改革のスケジュールが先延ばしになったりする恐れもあり、責任は重大だ。