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国内温室効果ガス、過去2番目の高水準 原発停止で石炭火力稼働増える

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

国内温室効果ガス、過去2番目の高水準 原発停止で石炭火力稼働増える

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日本の温室効果ガスの排出量  環境省が発表した2013年度の国内の温室効果ガス排出量(確報)は、二酸化炭素(CO2)換算で14億800万トンと、過去2番目の高水準を記録した。原発停止で排出量の多い石炭火力の稼働が増えたのが主因。政府は20年度までに05年度比3.8%減の排出削減目標を掲げているが、13年度は0.8%増と逆に目標から遠ざかった。年末の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け政府が30年までの排出削減目標を議論するなか、原発の有用性が裏付けられた形だ。

 原発の有用性裏付け

 13年度の排出量は前年度比1.2%増。昨年12月に発表した速報値では1990年度以降最大としていたが、最新の計算手法で過去のデータも再計算した結果、順位を修正した。過去最大はリーマン・ショックで経済活動が落ち込む前の07年度(14億1200万トン)。

 需要サイドの排出量を部門別で比べると、オフィスビルやホテルなどの業務部門で電力や石油製品の消費が増え、排出量は9.9%増。産業部門では機械や食品の製造業などで排出が減り0.7%減となった。家庭部門は省エネの取り組みが進んだほか、冬の寒さが厳しくなかったため1.3%減少した。

 種類別では温室効果の高い代替フロンの排出量が前年度比で9.2%増えたのが目立った。

 望月義夫環境相は「厳しい状況を踏まえ、より一層の省エネや再生可能エネルギーの大胆な導入で積極的に温暖化対策を進めたい」と意欲をみせる。

 ただ、排出量が増えた最大の要因は天然ガス火力の2倍のCO2を出す石炭火力の稼働増だ。東日本大震災後の原発停止を補うため、電力10社の電源構成に占める石炭火力の比率は、13年度に前年度比2.7ポイント増の30.3%となり、初めて3割を超えた。

 石炭火力は、発電コストが安価で昼夜を問わず一定量の発電ができる「ベースロード電源」だ。原発に頼れない現状では電力不足を防ぐ頼れる存在だが、温暖化対策では悪者扱いされ、新増設には反対が強い。

 年末にパリで行われるCOP21では、途上国を含むすべての国が参加する温室効果ガス削減の新たな枠組みで合意を目指している。議論に乗り遅れないためにも、日本は会議で提案する中期的な温室効果ガスの削減目標を、欧米などと遜色ない水準まで深掘りする必要がある。

 電源構成比に影響も

 政府は目下、削減目標の前提となる30年時点の電源構成比を議論している。だが、排出増に結びつく石炭火力の比率を現在の3割程度から上積みするのは難しい。導入を進めている太陽光や風力などの再生可能エネルギーも、過度に比率を増やせば固定価格買い取り制度を通じて電気料金が跳ね上がるため、導入量には限界がある。

 このため、現在は全基停止している原発の比率を2割程度まで回復させることで、発電コストの低減と排出削減の両立を目指す見通しだ。地球温暖化の悪化を防ぐためにも、原発の再稼働や原則40年と定められた稼働期間の延長などが必要だ。

 一方、経済産業省が発表した13年度のエネルギー需給実績(確報)によると、家庭や企業が1年間に消費したエネルギーの熱量(最終エネルギー消費)は前年度比1.0%減となり、東日本大震災後3年連続で前年割れした。震災があった10年度と比較すると4.9%減で、省エネの取り組みが進んだ。

 30年時点の電源構成の議論でも、削減目標の深掘りのため省エネ対策の上積みが検討されている。経産省は13年以降に年率1.7%の経済成長を見込みながら、発光ダイオード(LED)照明の普及など省エネ対策を積み上げた場合、30年時点の電力需要は省エネ対策をしない場合と比べて17%削減できると試算している。

 省エネで電力需要が抑えられれば、火力発電の稼働が減り、その分、構成比率に占める再生エネの割合を増やすことができる。ただ、想定を見誤り将来的に電力需要が想定を上回った場合、老朽火力の稼働増などで膨らんだCO2排出量を海外からの排出枠購入で補うことになりかねない。

 専門家からは再生エネを無理に積み増すことはせず、「原発の新増設を堂々と認めて経済成長と排出削減を両立すべきだ」との声も上がっている。

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