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「TPP6月合意」への3つの壁は(1)日米(2)TPA(3)全体交渉

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「TPP6月合意」への3つの壁は(1)日米(2)TPA(3)全体交渉

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TPPについての日米閣僚協議を受け、報道陣の取材にのぞむ甘利明TPP相=21日午前、東京・永田町(三尾郁恵撮影)  21日終了したTPP交渉の日米閣僚協議は、双方の溝の深さを改めて浮き彫りにした。来年に大統領選を控える米国の政治日程をにらみ、交渉全体の合意期限は「今年6月」との見方が強まっている。限られた時間の中で、交渉に終止符を打つには、日米協議に加え、米大統領貿易促進権限(TPA)法案、全体交渉という3つの“関門”を突破する必要がある。(本田誠、ワシントン 小雲規生)

聖域めぐり攻防

 「核心に入ると険悪になるのは毎度のことだ」

 甘利明TPP担当相は同日の記者会見で、USTRのフロマン代表との今回の協議をこう振り返った。

 協議後、甘利、フロマン両氏とも一定の前進はアピールした。だが、一筋縄ではいかない協議の実情は20日午前9時半に始まった2日目の協議が21日午前3時半ごろまで、もつれ込んだことからもうかがえる。

 争点は双方とも容易には譲れない“聖域”の扱いにほぼ絞られている。日本の農産品の象徴ともいえるコメと、米国の基幹産業である自動車分野の関税の扱いだ。TPP交渉参加12カ国の経済規模の8割を占める日米協議の決着は全体合意の大前提。甘利氏は今後、必要に応じて閣僚協議を開催する考えを示した。

反TPPでデモ

 日米協議の決着と並んで、全体合意の「重要な要素」(甘利氏)となるのがTPA法案の成立だ。成立しなければ、合意内容が米議会の反対で覆されかねないため、最終的な譲歩案を出し渋る参加国は多い。

 米上院で通商交渉を管轄する財政委員会は20日、TPA法案の審議を22日から始めると発表。下院歳入委員会は23日にも審議を始める。だが、法案の審議は難航も予想されている。

 米ワシントンでは20日、議会に圧力をかける狙いで、TPPに反対するデモ行進が行われた。デモ行進には労働組合関係者ら数百人が参加。労組幹部らは参加者に対して、デモ行進しながら携帯電話で議員らの事務所にTPA法案反対を訴えるよう呼びかけた。

 背景には、北米自由貿易協定(NAFTA)など過去の自由貿易協定が製造業の海外流出を招いたとの主張がある。米議会では労組を支持基盤とする与党・民主党でTPA法案への反対が強く、野党・共和党にも同法案でオバマ大統領に通商交渉の権限を委ねることには抵抗感が根強い。

交渉中断の懸念も

 日米協議が決着し、TPA法案が成立しても、知的財産など難航分野で日米と対立する新興国が歩み寄る保証はない。12カ国は23日から、米ワシントン近郊で首席交渉官会合を開くが、鶴岡公二首席交渉官は21日、今回の会合で課題が「すべて解決することは想定されない」と述べた。

 日本政府内では「遅くとも6月までに全体合意できなければ、交渉は中断を余儀なくされる」(交渉筋)と危ぶむ声も多い。「時間切れ」が迫る中、どう全体交渉を終結に持ち込むか。交渉を主導する日米の外交力が試される。

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