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政治
TPP協議「山場」 日米、進展探る
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協議に向かう甘利明(あまり・あきら)TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)相(右)とマイケル・フロマン米通商代表=2015年4月20日午前、東京都千代田区永田町(共同) 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉をめぐり、甘利明(あまり・あきら)TPP担当相(65)と米通商代表部(USTR)のマイケル・フロマン代表(52)は20日、東京都内で2日目の閣僚協議を続けた。5月下旬にも開かれる見込みの交渉参加12カ国全体による閣僚会合での合意を視野に、日本のコメや米国の自動車部品の関税の扱いで着地点を模索。日米は今月28日に予定される首脳会談で協議の「進展」を打ち出したい考えだ。
甘利氏は20日の協議に先立ち、記者団に対し「きょうが日米交渉の最大の山場になる」と強調した上で「国益をしっかり踏まえ、どう日米間の距離を縮められるか、最大の努力をしていきたい」と意気込みを示した。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)も20日の記者会見で「極めて厳しい交渉になる。困難な問題に対して、国益を踏まえながら全力で交渉したい」と述べた。
19日夜に始まった1日目の協議は残された課題の整理にとどまっていた。20日は、意見の隔たりが大きいコメや自動車部品などの個別分野を中心に協議を進め、事態の打開を図った。21日午前にはフロマン氏が日本を離れる予定。
コメに関しては、日本が高関税を維持する代わりに、米国から現在の無関税枠とは別に主食用米の輸入を年間5万トン程度増やす特別枠の新設を提案。これに対して米国は主食用米の輸入を17万5000トン程度増やすよう求め、調整は難航した。自動車部品でも、日本が要求する関税の即時撤廃をめぐり、対象品目やそれ以外の関税撤廃の猶予期間で米国と対立が続いた。
≪交渉加速狙い緊迫の攻防≫
昨年10月以来、約半年ぶりとなったTPP交渉の日米閣僚協議は難航していた両国の協議進展を“演出”し、交渉全体の加速につなげることを狙った。ただ、焦点となったコメや自動車分野の関税の扱いは日米双方にとって国内が最も過敏に反応する最重要課題だけに、「間合いを詰める大きなチャンス」(甘利明TPP担当相)とされた今回の協議も緊迫した攻防を繰り広げた。
甘利氏と米通商代表部(USTR)のフロマン代表による2日目の閣僚協議は20日朝に始まり、途中、農業や自動車分野の交渉官らも交えながら、20日夜まで断続的に続いた。甘利氏は当初出席する予定だった4月の月例経済報告関係閣僚会議を、フロマン氏との協議に集中するために急遽(きゅうきょ)欠席。ここにきても簡単には歩み寄れない日米協議の厳しさを浮き彫りにした。
もともと、今回の閣僚協議開催には「日米首脳会談を控えて、決裂という事態にでもなれば、会談にも悪影響を及ぼす」(政府高官)と懸念の声も上がっていた。それでも開催を決めたのは「日米は閣僚協議さえ開けない状況だと他の参加国に受け取られれば、交渉全体の合意機運が低下してしまう」(交渉筋)との危惧があったためだ。
米国側には、日本に市場開放を迫る努力を続けていることをアピールすることで、交渉全体の合意に欠かせない大統領貿易促進権限(TPA)法案への議会内の支持を集めたい思惑もあったとみられる。もちろん、これまでの協議で大きな進展があったのも事実だ。
例えば、日米間で焦点となってきた日本の牛・豚肉の関税の扱いでは、現在38.5%の牛肉関税を9~11%程度まで段階的に引き下げる方向。豚肉関税も、輸入価格が1キロ約65円未満の低価格品にかける1キロ482円の関税を、50円程度まで段階的に下げる案がほぼ固まっているもようだ。
コメや自動車部品といった政治的にも重要な項目は「協議の最終盤で扱う」(交渉筋)ともされてきた。
日米は今回の協議の成果を首脳会談で訴え、日米協議の行方を注視してきた他の参加国に重い腰を上げさせたい考え。5月下旬~6月上旬の開催が見込まれる12カ国の閣僚会合での合意が「最終期限」とも目される中で、今回の閣僚協議が吉と出るか凶と出るか。交渉は正念場を迎えている。(SANKEI E XPRESS)