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【西川農水相辞任】献金問題で引責 後任に林芳正前農水相

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【西川農水相辞任】献金問題で引責 後任に林芳正前農水相

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安倍晋三(しんぞう)首相に辞表を提出し、記者団の質問に答える西川公也(こうや)農水相=2015年2月23日、首相官邸(酒巻俊介撮影)  西川公也(こうや)農林水産相(72)=衆院比例北関東=は23日夕、安倍晋三首相(60)と官邸で会談し、自身が代表を務める自民党支部の政治資金問題の責任を取って辞表を提出した。首相は西川氏の辞任を了承し、後任に自民党農林水産戦略調査会長の林芳正前農水相(54)を充てた。閣僚の辞任は第2次安倍内閣以降では昨年10月の小渕優子前経済産業相、松島みどり前法相に続いて3人目で、昨年12月の第3次政権発足後では初めてとなる。

 首相は23日、官邸で記者団に対し「このような形で急な辞任となった。任命責任は私にある。国民におわびしたい」と陳謝した。その上で「しっかりと政策を前に進めていくことで責任を果たしたい。一致団結してとどまることなく前に進んでいきたい」と語った。

 政権が最重要課題に掲げる農協改革や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への影響については「後任の林氏は農水相としてTPP交渉に当たり、農協改革は党で西川氏と一体的にやってきた。政策に精通しており、全く遅滞はない」と述べ、否定した。

 首相は西川氏と会談した際、「職を全うしていただきたい」と慰留したが、西川氏は「国会審議は政策に集中すべきだ。自らの問題でそれがかなわない状況は変えたい。それには辞任しかない」と固辞したという。首相は記者団に「辞任の意思は固く、尊重した」と述べた。

 西川氏が代表を務める自民党栃木県第2選挙区支部は2013年7月、砂糖メーカーの団体「精糖工業会」(東京都)が運営するビル管理会社「精糖工業会館」(東京都)から100万円の寄付を受けた。精糖工業会は13年3月に農水省から13億円の補助金交付が決まっていた。政治資金規正法は補助金の交付決定から1年間、政党や政治資金団体への寄付を禁じている。

 砂糖はTPP交渉でコメや麦などと並び、日本が関税撤廃の例外と位置付ける重要5項目の一つ。西川氏は13年7月当時、自民党TPP対策委員長だった。

 この政党支部は12年9月にも、国の補助金交付が決まっていた栃木県の木材加工会社から300万円の寄付を受けた。西川氏は23日の衆院予算委員会で、09年の衆院選落選後にこの会社の顧問に就いていたと明かした。就任期間や報酬は「精査して報告する」と述べた。西川氏はいずれのケースでも違法性を否定している。

 西川氏は、栃木県職員、県議を経て1996年に衆院初当選。自民党きっての農政通として知られ、自民党TPP対策委員長として、TPP参加に慎重な族議員らの説得に奔走した手腕を買われ、昨年9月の第2次安倍改造内閣で初入閣した。首相は、西川氏を林氏の後任の党農林水産戦略調査会長に据え、農協改革やTPP交渉の党内調整を委ねる考えだ。

 ≪重い首相の任命責任 改革の行方に影≫

 昨秋の小渕優子、松島みどり両氏に続き、西川公也(こうや)農水相が自身の政治資金問題で23日、閣僚を辞任した。安倍首相は任命責任があると認めたものの、その重さを自覚すべきだ。西川氏が担当したTPPの交渉は大詰めを迎え、政府が最優先テーマに掲げる農政見直しは道半ば。浮上した疑惑の真相は明らかになっておらず、国民の政治不信が高まる懸念は拭えない。首相の唱える「改革」の行方に影を落とす恐れもある。

 首相は官邸で記者団に「政策を推進していくことによって責任を果たしたい」と強気の姿勢を崩さなかった。だが昨年の衆院選で与党に3分の2を超える議席を与えた「民意」を追い風に、先の施政方針演説で「戦後以来の大改革」を実行するとぶち上げたばかり。今回の事態は、国民の信頼に背いたとのそしりを免れない。

 後任にTPP交渉や農政改革に精通する林芳正前農相を選び、影響を最小限にとどめたのは焦燥感の裏返しと映る。

 西川氏をめぐっては衆院選前から、農業系政治団体から受け取った政治資金の収支報告書への記載漏れなど、不明朗な処理が指摘されていた。木材加工会社や砂糖業界からの新たな献金問題を受けた辞任劇の背景には、早期幕引きを図りたい政権の思惑も透ける。首相は十分に説明責任を果たし、政治の信頼回復に努める必要がある。(SANKEI EXPRESS

 ■林 芳正氏(はやし・よしまさ) 米ハーバード大院修了。防衛相、経済財政担当相、農相。54歳。山口選挙区、参院当選4回(自民党岸田派)。

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