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新国立競技場 森喜朗元首相「センチュリーが来て…ラグビーだけ降ろされた」
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会見する東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗会長=22日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ(栗橋隆悦撮影) 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は22日、日本記者クラブで記者会見し、建設計画が白紙撤回となったことで新国立競技場がラグビーワールドカップ(W杯)の会場として使用できなくなったことについて、「後ろから(高級車の)大きなセンチュリーかなんかが来て、そっちに乗ったらパンクしてラグビーだけ降ろされた」との例え話で残念がった。国立競技場の立て替えがW杯開催決定後、東京五輪招致に合わせて具体化したことを例えた。会見の要旨は以下の通り。
「2006(平成18)年ごろから9年間もここに来なかったという(司会者の)話だが、それは呼んでくださらなかったからでね。呼ばれれば来ましたが。もっとも、新国立競技場の話は(会見の)申し込みがあったときはもっと淡々としていて、ここ2、3日の話題になるほどとは思っていなかった。こんなことになるとは、私も夢にも考えていなかった。この7月29日からか、クアラルンプールで国際オリンピック委員会(IOC)の総会がある。そこで日本側のプレゼンテーションがある。もっとも次の五輪競技場のいろんな話題もあって、1週間近くあるが、日本の五輪がうまくいくように準備し、大会をつつがなく運営していくのが組織委員会の仕事だ。
この新国立の問題については、正直いって、私は大変迷惑している。別に新国立競技場を組織委員会が造るわけでもなければ、組織委員会が『こうしてくれ』『ああしてくれ』といったわけではない。国が造ること、都が協力することだ。
もう一つやっかいなのは、たまたま完成時、従来の目標の2019年というのはラグビーワールドカップが日本で行われる年だ。メディアは『ラグビーのために』といわれるが、その年はプレ五輪もある。そのほうがより大事だ。私がラグビー協会の会長をしていたし、体がデカイこともあって、私のほうに注目したのかもしれないが、なんかラグビー協会のために競技場を造るんだという見方をしているメディアもあったし、意図的に報じたものもある。私の巨体が遮っているように漫画に書かれていたが、そういうことじゃなくて、ワールドカップラグビーを決めたのはもっと早い時期だ。一番大事なのは決勝と準決勝、開幕試合だが、それをどこでするかということで、われわれは横浜の日産スタジアムを決めて、そこで申請して了解を得ていた。
ところが、そのことで、国立競技場を使うかどうかという話を国会議員の先生方とやっているときに、後ろから五輪をやるぞということになって、五輪をやるならラグビーも間に合わせればいいということで、われわれはまあ、クラウンくらいの車に乗っていたら、後ろから大きなセンチュリーかなんかがきて、『こっちの車の方がいいから乗りなさい。ついでに乗せてあげますよ』というので、そっちの車に乗ったらパンクして『じゃあラグビーだけ降りなさい』ということで降ろされたという、笑い話にもならない話なんでね。初めからラグビーなんて誘ってくれなければよかったなあと。
しかし、やりにくいのは、組織委員会の会長もラグビー協会の会長も森だということが、ことさら事柄をこんがらがらせてしまったという面があるのかもしれない。ただ、組織委員会は決して競技場を造ったり、競技場を運営したり、そういう役割ではないということだ。われわれの仕事はアスリートがつつがなくプレーができて、そのプレーができる場所をちゃんと造り上げて、選定して、いい会場を設営することだ。新国立競技場はわれわれは利用させていただく立場だということだ。私どもとしては決して愉快な話ではないわけであります。
組織委員会がスタートして1年半がたった。いま、総勢で380人くらいいる。これはどんどん増えていく。東京五輪は5年後の7月24日が開幕となるから、今月24日にセレモニーを予定している。大会のエンブレムの発表もそのときに行う。このエンブレムをつくると、国際社会の全部の商標権と抵触しないか調べないといけない。この作業も大変なことだ。それがだいたいOKとなって、採用することに決めた。そして、最初に見ていただくのは首相だろうということで、私が担当した。それがちょうど(今月)15日、安全保障関連法案で国会でがちゃんとやった日になって、安倍さんはそれを見るどころじゃなかった。そのときは『ああ、いいねえ』くらいのことであまり感動を示さなかったような気がする。『すごいなあ』くらいのことはいってほしかったけど、ちょっと残念だった。
1964年の東京五輪のとき、日本が戦争に敗れて19年目だ。とにかく北海道から沖縄まで焦土と化して、食べるものもない時代から、五輪を一つの契機に東京や日本を造り替えた。新幹線や高速道路や都市計画、新しい日本をつくるために五輪は大きな役割を果たした。単にスポーツマンの集まりということではなくて、日本全体の底力を見せて日本を紹介するということと、世界は一つだということを見せる場だ。担当される人はそういう気構えでやってほしいし、五輪の一番の責任者である首相はそういうお気持ちで、『これから日本は世界を変えていくんだ』というお気持ちで五輪にあたってもらいたい。
実は私はこの7月14日で78歳になった。だから、五輪のことも心配だけど、五輪まで自分の体がもつかどうかと。最初は随分、そういう気持ちだった。案の定、この3月に肺がんであることがわかって、医者から『すぐ取れば大丈夫だよ』といわれて、取ってもらった。そして『何年持ちますか』と聞いたら、『まあ命があるまで持ちますよ』なんて言われたんだが、まあそういうものを持ちながら何とか頑張って、あとは足を少し強くして、五輪でスタンドに上がるときに手を引っ張って上がらなくてはならないようなことだけはしたくないなと思っている。
この1年半の間に何をやったか。まずやったのは、組織委員会と東京都が造る施設がどれくらいかかるかということだ。都が造るのは恒久的な施設だ。1964年のレガシー(遺産)として造られたものは、駒沢のグラウンドとか体育館、あるいは代々木の施設だ。その後、多くの国民のみなさんに利用していただけた。今回、いくらくらいかかるか調べ上げたら大変なもんだった。はるかに4000億円を超えていた。それでできるだけ切った。約2500億くらいに圧縮した。一番抵抗が強かったのは、ヨットのセーリング協会だ。ヨットのみなさんは東京湾にすばらしいハーバーを造りたいという夢を持っておられた。しかし、そのためのお金は大変なもので、堤防を1本造るのに460億円だ。それを2本造るという。ボートのコースも、当初の予定では約1000億円だ。新国立競技場が2520億円が高いとおっしゃるが、ボートのコースは1000億円だ。だれも高いといわなかった。
組織委員会が受け持つ施設は仮設だ。造って、使ったら全部壊してしまう。ところが意外にお金がかかる。お台場の公園ではビーチバレーをやるが、そのために砂浜をつくらないといけない。その砂代だけで約20億円くらいかかる。その周りを1万人のスタンドを造らないといけない。そのスタンドだけで約40から50億円かかる。こういうようなことがいっぱいある。組織委員会は施設の負担だけでも1000億円は超えるし、さらに運用しなければならない。
幸い、全体の経費はソチ五輪で約4兆2000億円といったかな。ロンドン五輪が約2兆円だ。これだけかかるということになると、なかなか次の五輪をやるという都市が出てこなくなる。2022年の冬季五輪はオスロが辞退した。大変な金がかかるということだ。だんだん五輪に金がかかりすぎるという批判や心配が各国のオリンピック委員会で話題になっている。
開催地がいまも決まっていないのが自転車だ。なぜかというと、大変お金のかかる競技でね。施設を造ったあとにどうするのかという話で、ある人がいうには『日本にちゃんとありますよ』と。聞いたら修善寺だ。そこへ持っていけばいいということになって、いったんは修善寺にいくことが決まったが、国際連盟のほうがなかなか『いい』といわない。今はまだ折衝中だ。
今後、国と都と組織委員会が施設を用意するが、都と組織委員会の金額に比べて、国が負担するのは新国立競技場だけだから、ずっと金額は低い。そういう目でみなさんには見ていただきたい。新国立競技場の2520億円が高いか安いか。五輪で使う施設の建設費を総合すると実は国が一番安い。このあたりの数字は安倍晋三首相はご存じない。こういうことを下村博文文部科学相は知っているんだから、もう少しきちんとそういう説明を閣内でしないといけなかった。
もともと、国立競技場は老朽化していた。建て替えないといけないということは、だれもが分かっていた。もう10年も前に、建て替えはみんなの関心事だった。でも、なかなかお金もかかるし、文科省はお金もないし、きっかけがつかめなかった。財務省もできるだけお金をかけたくないということだしね。つまり、国立競技場の建て替えは、ラグビーのワールドカップや五輪の招致がきっかけになって政府は重い腰を上げた。レガシー(遺産)としての残るもの、すばらしい聖地をつくらなければならない。もう一つ、収容人数を8万人に一番こだわったのはサッカー協会だ。サッカーのワールドカップを誘致するには、8万人というのがが約束事だ。そうした希望を受け入れたものをつくるのがスポーツファンのためにもなるだろうということで、新国立競技場の計画はできた。
日本のこの全体の計画でいっても、当初のものよりも3倍くらいお金はかかっているから、最終的に日本も2兆円を超すようなことになるかもしれない。五輪の経費は大変なお金がかかるものだということはご承知だと思うが、そういうこともあえて申し上げておく」
--五輪を開催する7月は暑い
「それは頭が痛いことだが、私はかつて安倍首相に2時間のサマータイムを導入したらどうかといったことがある。安倍首相は『みんな反対するのでねえ』といっていたが、それが先ごろ導入された「ゆう活(ゆうやけ時間活動推進)」ではないか。ただ、選手は暑いことを頭に入れた練習をしていると思う」
--安倍首相が五輪の開催時も政権を運営している可能性は
「これはなかなか大変な問題だが、個人的な感情をいえば、2020年の五輪の開幕宣言も安倍首相にやってもらいたいなという気持ちはある」
--首相として?
「首相でなきゃできないですね。安倍首相が首相として宣言できるように、しっかり内閣を運営し、国民のためにしっかりやらなければいけない。日本国のためにやるということは、必ず国民に理解してもらえるだろうし、またそうでなければいかんと思っている」
--新国立競技場の建設費はいくらぐらいが妥当か
「いくらかかるか、いくら縮小するかということは基本的な設計をして、みなさんが考えることだ。建設会社はどうもうけるかを考えるわけだし、もう一方はできるだけ安くしてほしいなということだ」
--どのような競技場をつくってほしいか
「組織委員会はそういうことを考える組織ではない。やる資格もない。発言権もない」
--関心があれば口を挟むか
「それはできないと思う。こちらから『ああしろ』『こうしろ』とはいえない。国立競技場をスポーツだけではなくて、文化の聖地にしようというのがみなさんの気持ちだ」
--新国立競技場の整備計画見直しをめぐる責任問題をどう考えているか
「機構上、JSC(日本スポーツ振興センター)や文部科学省が扱う素材ではなかったと思うが、それまでの慣例でそうなったのだろう。従って、どこに責任があるというのはなかなか難しい問題だが、全体で負わなきゃならんことだと思う。日本の役所というか、機構上の問題だろうと思う。責任をどうこうということも大事だが、新たに官邸が責任をもってやるといって不退転の気持ちでやっているから、それを全部見てからでいいのではないか。そこでだれか責任をとらせたり、犯人を出したりしてもプラスはないと思う」
--文科省が難しいボールを持ちすぎた?
「持ちすぎてどこにボールを渡していいかわからなかったということだろう」
--パスを寄越せという人もいなかった?
「いなかった。だからそのうちにタックルされて、わやわやっとなっちゃった」
--遠藤利明五輪相に期待することは?
「遠藤さんは大臣に就く前から、スポーツ関係で極めて重要な役回り果たしてきた。スポーツ基本法の改正とか、サッカーくじの導入とか。多年の悲願であったスポーツ庁の設置をめぐって国会対応の中心になったのも遠藤さんだ。遠藤さんが長い間、日本のスポーツ政策をどうしたらいいかということに一番熱心に取り組んできた。何もかもしっかり目配りできると思うし、どのスポーツ団体からも喜ばれるだろうし、各省庁も安心していると思う。新国立競技場については、五輪のあとも、スポーツと文化の殿堂という形で残ってほしいと思う。日本中の子供たちや若者たちやアスリートが、神宮外苑を目指すというふうになってもらえるような競技場であってほしい」