それを象徴するエピソードが、小僧寿しの創業者、山木益次氏が2004年に出版した『強さと弱さ 小僧寿しチェーンの秘密』(ストーク)の中にある。本の中で山本氏は近年、小僧寿しの売り上げが落ちているのは、商圏が縮小しているからだと分析している。
調査をしたところ、1991年のユーザーの33%は、徒歩や自転車で3分以内から来店していた。しかし、2003年になるとこの層が72%に増加。さらに、自動車で5分以上かけてくる客も激減していた。
近場の客が増えているにもかかわらず、売り上げに現れていないということは、店の数が少なくて客を取りこぼしているからだ。ならば、同じ商圏内に集中的に出店して、ロイヤリティーを高めていけばいい--。
そんな考えから、セブン-イレブンのようなドミナント戦略をすべきだというのである。
小僧寿しも青色吐息
2004年といえば、前年に少子化社会対策基本法ができて本格的な「人口減少社会」の到来が叫ばれ始めたタイミングだ。商圏内の人間が減少して急激に高齢化していくというのに、商圏内を店舗で塗り潰そうとしていたのである。
現在の店舗数からも分かるように、この戦略が実行されることはなかったが、小僧寿しという会社が平成になってもなお、昭和の右肩上がり幻想を引きずっていたことがうかがえよう。
そしてこのような傾向はつい最近まで見られた。2013年、小僧寿しの営業赤字が過去最悪を記録した。原因は、当時の社長が就任以来進めてきた、「宣伝広告費大量投入」と「安売り路線」である、と当時の経済メディアは報道している。
要するに、競合よりも安い寿司を提供して、テレビCMをバンバン放映すれば、客がガンガンやって来るだろう、という戦略が大ハズレしてしまったというのだ。