奄美大島で持ち上がった「クルーズ船寄港地建設」
【清野】奄美大島に持ち上がっている、外国籍の大型クルーズ船の寄港地建設の話ですね。
2018年5月1日の『産経新聞』の記事(「【異聞~要衝・奄美大島(上)】『中国にのみ込まれる』大型クルーズ船寄港計画の裏に…」)によれば、国土交通省が2017年8月に発表した「島嶼部における大型クルーズ船の寄港地開発に関する調査結果」を発端に、7000人の中国人観光客を乗せる大型クルーズ船の寄港計画が奄美大島で表面化しました。候補地の一つである瀬戸内町は、16年に寄港地建設の打診を受けたときにいったん断っていましたが、今回は誘致に向けて動き出しているそうです。
【カー】観光地としての基盤が何もない町に、一気に7000人の観光客が上陸することになったら、いったいどうなるのか。住民の不安は当然のことです。
【清野】候補地には、それに対応できるような道路はない、駐車場はない、公共のトイレはない、という何もない状態ですから、受け入れの際には、ここぞとばかりに、お決まりの大がかりな公共工事が発生するでしょう。
【カー】それらの原資はもちろん税金です。
【清野】その先の光景も予測できますね。クルーズ船の客をあてこんで、大規模なショッピングモールができる。そこには、ファッションブランドのアウトレット、宝石や化粧品のディスカウント店、ファストフードが並ぶフードコートが入る。世界各国でお目にかかる「あの眺め」です。
観光客のお金は「別の土地」に流れていく
【カー】それでも欧米の観光先進地では、DMO(観光地域作りにおいて、戦略策定やマーケティング、マネージメントを一体的に行う組織体)による観光振興が、その地域の特性を生かした開発の中心になっています。しかし、奄美大島で進められようとしている大型クルーズ観光船のビジネスモデルから、その理念は見えてきません。
そもそも大人数を1カ所に集め、買い物をさせて利益を上げることが主眼で、観光は買い物のプラス・アルファぐらいのもの。しかも人々が買い物で消費したお金は、ショッピングセンターの運営業者を経由して、別の土地や国に流れていきます。
【清野】近ごろ、タイやバリ島で大問題となっている「ゼロドルツアー(zero-dollar tourism)」のような構図ですね。
【カー】まさしくそうです。ゼロドルツアーは、この数年、特にタイを中心とした東南アジアに蔓延している悪質な観光スキームです。このゼロドルツアーこそは、もう一つの大きな「観光亡国」的な話題ですね。