--市民や企業の理解を得るために何をしたのか
「一般市民に対しては、大会期間中は、『不要な移動は行わない』『自家用車の利用を避ける』などを求めるキャンペーンを実施した。企業には、550社60万人以上を対象にワークショップを開催し、混雑回避に向けた理解の醸成に努めた。企業の協力がどの程度見込めるかという情報が予測に反映され、対策の精度を高めていった」
--実際の成果は
「ロンドン市交通局のリポートでは、ロンドン都心の交通量が午前ピーク時に16.3%、午後ピーク時に9.4%減少したというデータが見られた。ロンドン地下鉄では、通常時に比べ135%の利用だったにもかかわらず、定刻通りの発着実績が98%と高い水準を維持した。おおむねうまくいったとみてよいのではないか。一方で、イギリス運輸省の統計によると、競技会場を抱える地域の交通速度が、通常時に比べて最大で時速4マイル(約6.4キロ)程度遅くなったというデータもある」
--これらの交通輸送対策は東京大会にも活用できる
「すでに、都が検討している輸送運営計画案の随所に、ロンドンの対策事例が織り込まれており、ロンドン五輪・パラリンピックのレガシーとして活用されようとしている。東京大会の実績は、今後都内で大きなイベントが開催される際の交通輸送対策に貴重なデータを残すだろう。24年パリ大会や28年ロサンゼルス大会にも、さらに精度を高めて引き継がれていくことを期待している」(田中徹)
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ながせ・ゆういち 昭和52年生まれ。ロンドン大学キングスカレッジ卒(修士)。現在、交通経済研究所調査研究センター副主任研究員。ロンドン五輪・パラリンピックにおける交通輸送対策を分析。国内外の交通事業や政策についても調査・研究している。