日本の議論

東京五輪の渋滞対策 「カギ握る需要予測」「テレワークが効果的」 (4/4ページ)

 --五輪を機に物流は変わるか

 「共同配送や倉庫運用の改善など『シェアリング』の仕組みが進展する可能性がある。1社だけでは本格的に実施できなかったので、五輪は業界全体が取り組む好機になるからだ」

 --鉄道対策はどうか

 「首都高の混雑は車両の通行量を減らせばよいが、鉄道を止めるわけにはいかない。時差出勤では、早朝にずらす方法を勧めている。一人一人の通勤時間や経路は違うので、個人でも時差出勤を試して、駅の様子などを確認してみるのもいい」

 --対策を取らなければどのようなリスクとなるか

 「東京五輪の成功は、日本の成功でもある。外国人観光客にいかに心地よく観戦してもらうかで、日本に対するイメージも違ってくる。成功すれば、五輪で導入される日本の最先端テクノロジーの格好のアピール材料となり、海外ビジネスでのチャンスも広がる。交通輸送対策はその意味で重要だ。企業にとって、対策は五輪のためではなく、事業の効率化や従業員の働き方改革のために行う必要性がある」(佐々木正明)

 かわぐち・たかひさ 昭和60年生まれ。慶応大大学院を修了後、平成22年に東京海上日動リスクコンサルティング入社。専門分野は地政学リスク、サイバーリスクなど。近著に『「技術」が変える戦争と平和』(芙蓉書房出版、共著)。

 【記者の目】

 東京五輪・パラリンピックの大きな課題である交通渋滞、鉄道の混雑への対処策は東京がこれまで悩まされてきた、大都市ゆえの社会問題を解決に向かわせる可能性を秘めている。

 都心に張りめぐらされた道路・鉄道のネットワークは時間短縮に貢献しているが、その便利さえゆえ、人口の増加やサービスの多様化を生み、混雑や渋滞が発生する要因にもなった。

 今大会の交通輸送対策は都心に入る人・モノを減らす交通需要マネジメント(TDM)と、渋滞箇所の通行規制を行う交通システムマネジメント(TSM)が柱。高速道路の通行料金を上げ下げするロードプライシング導入も検討されている。こうした対策がうまくいけば、企業活動の効率化や働き方改革にも弾みがつき、東京大会のレガシーとして、今後、対策が定着することも期待される。(佐々木正明)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus