自社サービス立ち上げに向けて苦しかったことはありましたか?
「当初提供していたサービスは、日本在住の外国人向けの国際SMS配信サービスでした。手堅く収益がでていましたが、SkypeやWhatsAppなどの無料メッセージアプリの出現により、有料でテキストメッセージを送るという事業の根幹が揺らいだため、2010年に国際SMS配信事業をやめる決断をしました。同時に、SMSに対して大きな発想の転換をしました。SMSそのものに本質的な価値があるのではなく、携帯電話番号にその価値があるという発想です。携帯電話を販売する際には、運転免許証等による本人確認が法律で義務付けられているために、本人確認されている携帯電話番号にメッセージを送るSMSは潜在的な価値と需要は大きいと考えた我々は、日本で初めての法人向けSMS配信事業を開始しました。しかし、当時日本はキャリアメールが主流で、SMSはほとんど利用されていなかったため、顧客にSMSそのものを理解してもらうことすら苦労しました」
何が事業拡大の転機だったのでしょうか?
「2011年に潮目が一気に変わります。『LINE』がサービスを開始し、そのLINEの本人認証に我々のサービスが採用されました。LINEのユーザーが爆発的に増え、本人認証サービスの認知が一気に進みました。それを契機に、スマホゲーム等での採用が進みました」
スピンアウトした会社というのはその事業だったのですね。
「そうです。導入先が増えるにつれ、事業の可能性の大きさが確信に変わりました。そして、このマーケットを大きく伸ばすためには、上場をすることが最善であると考え、SMS事業をスピンアウトし、2014年にアクリートを創業しました。私自身も本気度を示すためにインディゴを辞し、そしてメンバーも付いてきてくれました」
なるほど。設立当初から上場を見据えていたのですね。
「そうです。SMSというのは世界標準規格でどの携帯電話にも搭載されていますが、日本での認知度は低い。上場することでその市場の認知度を上げ、トップシェアであるアクリートの事業をさらに拡大させるという目論見でした」
ああ、だからしっかり収益を出される体制にされていたのですね。
「はい。ただ、上場時の史上最少の従業員数というのは、事業の成長に最適な選択をした単なる結果です。また、私は働き方の多様性を尊重する観点からも、時間的な制約はあるが能力や経験値が高い方を積極的に活用していました。実際、経験豊富な主婦の方々にパートタイムで柔軟に勤務して頂いて、大きな戦力としていました」
緻密な戦略だったのですね。
「上場を目指すと決めた私の責務は、事業と会社組織をしっかり成長させることと、市場が成長するタイミングから逆算して上場準備をしていくことでした。ですから上場した後も事業は成長しています。創業から5期連続の増収増益を達成し、50歳になったタイミングで退任することにしました」
「やりきれていない。過去を振り返る気などない」
今までを振り返ってみてどう思われますか。
「私はまだ振り返る気持ちになっていません。私の人生はまだ半分過ぎただけで、まったくやりきれていない、これからだと思っています」
失礼しました。