では逆に、経営者に遇される参謀幹部とは? 一つには、経営者からして自分では気がつかなかった側面に光を当ててくれたり、別の角度からの策を提案してくれるような人です。こうしたことができるようになるには、危機意識・違和感、あるいは強い好奇心と洞察力を日頃から意識的に醸成する努力が望ましいでしょう。
第一の要素は「議論すべき課題と論点の見立て」ができることだと杉田さんは言います。上記とは反対に、社長が視界に入れることができていなかった部分や、思い廻らせ切れていなかった点に対して目を配り、抽出・提示をしてくれる参謀。VUCAと言われる昨今の事業環境、経営環境の中、経営者も迷っているのです。事業や現場に最も近い場所にいる幹部のあなたが解くべき課題を設定し、潰していくべき論点の粒度と順序を決めてあげられれば、社長からの信頼抜群です。
「意思決定のメカニズムとプロセスを組み立てる」ことができる幹部
第二の要素として杉田さんが挙げているのは、「意思決定プロセスのデザイン」ができる幹部。我が社の意思決定のメカニズムを理解し、そこへ到達させるまでのプロセスを組み立てるデザイン力、設計力を発揮するのが優秀な参謀幹部です。プロセスを組み立てる過程で参謀に求められるのは、ある種の直感力だと杉田氏は言います。
「経営層との議論の中で、『どうやらこのルートが正しいようだから、このまま直進しよう』と判断するのか、『これを続けても前に進まないから、方向転換しよう』と判断するのか。こうした見極めには、緻密ではあるが臨機応変に対応できるフレキシブルなセンスが不可欠となる」(『プロフェッショナル経営参謀』)
私は、これには、幹部の皆さんがトップに折々、情報素材や企画の途中経過案を「当ててみる」ことが大事だと見ています。実際、できる参謀は不定期的に、過剰にならない程度にかなりの頻度で「これでどうです?」とシナリオ案や企画の整理を策定途中段階でトップにレビューを求めることを、非常にうまくやっています。こうしたことができるようになるには、論理思考力・構造化力と段取り力が欠かせませんね。
「経営者を刺激する材料と考えさせる質問を突きつける」ことができる幹部
第三の要素は「議論の誘発」です。経営者を刺激する材料を提示し、考えさせる質問を突きつける。経営層からの反発大歓迎で、既成概念や固定観念から脱出させることが、自社の未来を切り拓き、結果として経営陣から大きく評価されることになるのです。(人の意見に全く耳を貸さない一部特定のエゴ型経営トップは今もそこここに存在しますが、そうしたトップの企業がウィズ/アフターコロナで永続することは難しいと思われますので、もしあなたがそうしたトップの会社に所属されている場合は、早期脱出を検討されることも一考かと…。)