スマート農業プロジェクトからの中間報告では上記のような効果が実証実験から創出されてきたという報告がありました。
ここまでのこの実証プロジェクトは前述してきた令和元年採択 69地区に引き続き、令和2年度採択 55地区および令和2年度では緊急経済対策で24地区の追加採択があり、2年間で実証地区は148地区に増加しています。加えて、令和3年度も現在日本全国からの取り組みの申請があり、採択先を農林水産省が審査している状況です。
今、国内のスマート農業を取り巻く環境はこの実証実験を中心として様々な成果を生み出している状況です。こうした状況は日本の農業の未来にとっても、非常に良い状況です。
■農業DXの取り組みを期待したい
最後に、ここまでの実証がうまく行っているからこそ、私が本当に警鐘を鳴らしたいこと、関係者のみなさんに取り組んでもらいたいことを述べたいと思います。DXはただ、自動化する効率化するといった打ち手ではないということ、その取り組みの先にどういった農業の未来や目的、ビジョンがあるかを今一度考えてもらいたいと思っています。
目の前の実証で得られた成果や結果に一喜一憂するのではなく、事業として、プロジェクトとして農業の未来のために永続的に取り組めるものであるか? 真剣に考えていかなくてはいけないということです。
そのためには取り組んでいる方すべてが、本質的に今一度、農業の未来を考えたDX化の目的・ビジョンを指し示す事、そして実証実験で終わらせないための施策費用の生み出し方を農業DX化に取り組むすべての人が取り組んでいかなくてはいけないと思います。
これまでの農業ではあるあるですが、せっかく実証実験等をおこなっても、例えば国の予算が尽きれば終了してしまった施策も数えきれないほど存在しています。上記に述べたスマート農業で得られる効用等が更に改善され、産業全体に浸透し、誰もが使いやすく、なくてはならないという基盤が作られていく事が農業のDX推進にとても大切になってくると思っています。
すべての実証の成果が出てきた先に、どういった農業の未来を誰が描いて未来に続く取り組みへスマート農業を導いていくのか? 産業全体を変革していくために今まさに考えなくてはいけないフェーズへ来ています。
【「ビジネス視点」で読み解く農業】「農業」マーケットを如何に採算のとれるビジネスとして捉えていくか-総合農業情報サイト『マイナビ農業』の池本博則氏が様々な取り組みを事例をもとにお伝えしていきます。更新は原則、隔週木曜日です。アーカイブはこちら