炭素繊維、量産車で躍進 日本勢優位、供給の動き加速 (1/3ページ)

2011.2.12 05:00

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 鉄よりも軽い上に丈夫で「夢の素材」と呼ばれる炭素繊維を使った自動車がスタンダードになる日が近いかもしれない。世界最大手の東レがダイムラーと炭素繊維を使った自動車部品の合弁会社を近く立ち上げ、三菱レイヨンも独BMWへの納入を決めるなど、炭素繊維メーカーの間で量産車への採用を目指す動きが加速しているためだ。日本メーカーが優位に立つ分野だけに、低迷する日本経済のカンフル剤としての期待が高まる。

軽量化の解決策

 「重要な課題となっている車体軽量化の解決策になる」。東レの小泉慎一副社長は、1月下旬に開いたダイムラーとの合弁会社設立会見で力説した。

 両社は3月に合弁会社を設立した後、ドイツに工場を建設。炭素繊維と樹脂を組み合わせた「複合材」を加工して自動車部品を製造する計画だ。製造した部品は、まずダイムラーが2012年に発売するメルセデス・ベンツの「SLクラス」に採用。他の自動車メーカーへの供給も視野に入れる。

 自動車向けでは三菱レイヨンも独素材大手のSGLと組み、BMWが15年までに発売する電気自動車(EV)向けに供給する。東レ、三菱レイヨンと“3強”を構成し、世界市場の7割を分け合う帝人も技術開発に本腰を入れている。

 炭素繊維は鉄に比べて強度が10倍あるにもかかわらず、重さは4分の1。自動車の各パーツに採用されれば3割もの軽量化が可能になるとされ、EVやハイブリッド車(HV)に使えばバッテリーの長寿命化にもなる。しかもさびず、耐熱性も高い。地球温暖化を背景に自動車の燃費性能向上が求められる中、車体軽量化を実現できる「炭素繊維自動車」への潜在需要は大きい。炭素繊維メーカーが「バスに乗り遅れるな」とばかりに、自動車メーカーとの連携や技術開発強化を急ぐのは、この新しい成長市場をライバル企業に先んじて取り込みたいと考えているからだ。