関西国際空港と大阪(伊丹)空港の経営統合に向けて4月に設立される「新関西国際空港会社」の創立総会が23日開かれ、三井住友銀行副頭取の安藤圭一氏(60)の社長就任が正式に決まった。新経営陣は7月の統合に向けて経営方針を策定する。1兆円超の有利子負債を抱える関空の再生に取組み、早ければ平成26年度に民間への運営権売却(コンセッション)の実現を目指す。
総会では関西電力執行役員兼京都支店長の安部川信氏(59)、現関空会社へ国土交通省から出向している室谷正裕氏(56)が取締役に、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問で明治大学法科大学院特任教授の門口正人氏(66)が監査役に就任することも決まった。
記者会見で質問に答える安藤氏の言葉には「7月に向け議論を深める」という国に配慮した慎重な言い回しが目立った。新関空会社は国が100%株主で、国交省出身の室谷氏が取締役に就くなど政府主導という“重し”が見え隠れする。
コンセッションの実現には売上高の拡大による両空港の事業価値向上が必須だ。安藤氏は、両空港それぞれが今以上に収益を高められる体質になることが必要との考えを強調した。
しかし、新会社の経営には安藤氏が携わってきた金融界以上に「規制」という厄介な壁が立ちはだかる。例えば、伊丹は平成16年12月に国交省が示した「最終方針」で、需要の多いジェット機の発着は1日の総発着枠370回のうち200回に制限されている。
ここ数年、ジェット機の低騒音化とプロペラ機の老朽化で、ジェット規制が時代にそぐわなくなっているにもかかわらず、規制緩和は実現していない。その背景には、地元自治体ごとの利害が絡み合い、意見集約の難しさが横たわる。
地元には「国がこれまで本腰を入れてこの問題に取り組んできたとは言いがたい」(大阪府議)という不信感も渦巻く。安藤氏は「統合は地元の協力がないと成功しない」と述べ、法定協議会などで地元と意見交換する意向を示した。
関西財界は政府に対し、民間主導の経営を求めてきた。安藤社長はその試金石となったが、パナソニック出身で現関空会社の福島伸一社長の処遇は明らかにされていない。4~6月の「準備期間」に、安藤氏が指導力を発揮できる環境が整えられるかが注目される。(南昇平、宇野貴文)