国内で稼働する原子力発電所がついに、42年ぶりにゼロとなる。国内50基のうち唯一運転している北海道電力の泊原発3号機(北海道泊村、91万2000キロワット)が5日深夜、定期検査のため発電を停止。そのまま「原発ゼロ」が長期化すれば日本経済へのダメージは大きい。火力発電への依存度が高まり、燃料費は年間3兆円超も増加。電気料金値上げが企業活動の足を引っ張るだけでなく、国内製造業の空洞化に拍車をかけ、消費を冷え込ませる恐れもある。
稼働ゼロは、当時は2基だった原発が検査で停止した1970年4月30日~5月4日以来。政府は関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働への同意を地元などに求めているが、見通しは立っていない。
経済産業省幹部は「原発ゼロが続けば日本は衰退の道をたどる」と懸念する。試算では1年間の原発ゼロで、石油や液化天然ガス(LNG)などの燃料費は10年度より3兆1000億円増える。日本の国内総生産(GDP)の約0.6%に当たる「国富」が海外に流出する格好だ。
燃料費増加は電気料金の値上げに直結する。東電は既に企業向けで平均17%の値上げを発表済み。家庭向けでも10%の値上げを行う方向だ。SMBC日興証券の試算によると、東電管内では企業の経常利益が約3900億円減り、家計の消費にも約3000億円のマイナスの影響がある。