信託銀行各行が相続関連ビジネスに力を入れている。遺言書の保管や相続手続きを請け負う「遺言信託」商品は、安定した手数料収入を見込めるだけでなく、コンサルティングを通じて資産運用のビジネスにつながるケースも少なくない。約1500兆円に上る日本の個人金融資産のうち、6割を60歳以上が保有しているとされるだけに、銀行側は新商品の開発や態勢強化に余念がなく、有望マーケットの争奪戦は激しさを増している。
10年で倍増、7万件超
「『自分の身に万が一のことが起きたら』と、真剣に考えるようになった」
三菱UFJ信託銀行が開く相続をテーマにした講演会では、東日本大震災以降、説明を終えたリテール企画推進部の灰谷健司主任調査役に参加者らがこんな声を寄せるようになった。
灰谷氏は「相続は誰もが経験するので、生前にしっかり備えておくことが重要」と強調する。故人が相続手続きを怠り、遺族の間でトラブルが起きる例は後を絶たない。一方、信託協会によると、金融機関が保管する遺言書の件数は2011年9月末に約7万3000件で、01年度末の約3万7000件と比べ、10年間でほぼ倍増。遺言の重要性への意識も浸透しつつある。