「穀物取引」勢力図が変わる… 丸紅、ガビロン買収の決め手は中国販売網 (1/3ページ)

2012.5.31 05:00

 肌寒い空気が張り詰める3月27日早朝。まだ出勤する社員も少ない東京・大手町の丸紅本社に、米穀物メジャー、ガビロンのグレッグ・ヘックマンCEO(最高経営責任者)ら幹部5人が通用口からビルに入った。朝田照男社長や食料・食品部門担当の岡田大介常務ら両社トップが初めて顔を合わせ、買収に向けて詰めの交渉を行うためだ。

 「この買収に勝てなければメジャーの後塵(こうじん)を拝したままだ」(岡田常務)との危機感を背に、丸紅は買収に向けて今年1月に米ネブラスカ州のガビロン本社に25人のチームを派遣して資産査定と交渉を本格化。その数は延べ40人にのぼった。

 結果として、今月29日の取締役会で正式決定、約2860億円という同社としては過去最大の買収を決断した。

 ガビロン買収によって丸紅の穀物貿易量は3300万トンと、トップの米カーギルの4000万トンに迫る。穀物の世界貿易はこれまで約7割を米国の穀物メジャーが牛耳っていたが、世界再編の波は大きく、勢力図は大きく塗り変わりそうだ。

 タッグで大手追撃

 両社が買収で合意した背景はこうだ。ブラジルと並ぶ世界最大の穀物生産地である米国に集荷網を持つガビロンだが、海外展開が手薄だった。片や、世界最大の穀物消費国となった中国で販売網を持ち、年間1100万トンを中国向けに輸出する丸紅は、中国やアジア向け取引を増やす上で北米集荷網の増強は欠かせない。この2社がタッグを組めば、カーギルなど大手を追撃できるとの思惑が一致した。