【ニッポン経済図鑑】東京ガス扇島工場 (1/3ページ)

2012.6.18 05:00

 ■25万キロリットル 世界最大LNGタンク

 じりっ、じりっと、ドーム状の屋根がせり上がってくる。ブロワー(送風機)で送り込む空気の圧力を用い、重さが約960トンもある鉄筋コンクリート製の屋根を、8時間かけて地下約50メートルから地上まで持ち上げていった。

 2009年11月の着工から2年半。東京ガス扇島工場で25万キロリットルを貯蔵できる世界最大の液化天然ガス(LNG)地下タンクが、その全容を現した。タンクの地上部分には土を盛り、自然の力で草が生えていけば、高さ10メートルの小高い「丘」ができあがる。

 ◆一般家庭の36万軒分

 地下タンクの直径は約70メートル、高さは約60メートル。奈良・東大寺の大仏殿がすっぽり入るほどの大きさで、一般家庭約36万軒分の年間使用量を賄える。都市ガスの需要がピークを迎える冬季に間に合わせるため、13年11月の稼働開始を目指す。

 扇島工場では4つ目の地下タンク。1~3号は屋根が土にすっぽり覆われて地面が平らになっているのに対し、4号は大きく盛り上がっているのが特徴だ。扇島プロジェクトグループマネジャーの堤洋一さん(50)によると「強度の問題もあり、技術的には平面の方が難しい」という。

 なぜ4号機だけドーム形にしたのか。それは東京ガスが取り組んできた地下タンクの大容量化と関係がある。

 これまで世界最大の地下タンクは、東京ガスが1995年以降、扇島工場をはじめとする管内の数カ所で順次整備してきた20万キロリットル規模のタンクだった。