9月の再上場を目指す日本航空の周辺がにわかに騒がしくなってきた。業績のV字回復で攻めの戦略を打ち出す日航に対し、ライバルの全日本空輸が「このままでは公平な競争ができなくなる」とかみついたからだ。日航の再上場が民主党政権の「手柄」とならないよう、自民党も「待った」をかけるなど政治の思惑も交錯。順調すぎた日航の再生は最終局面で思わぬ“横やり”に悩まされている。
更生法適用の“特典”
「正直言ってあの利益レベルには届かない。競争環境がゆがめられる」
全日空の伊東信一郎社長が、日航の急速な業績回復に疑問を投げかけたのは5月17日のことだった。直前に発表された平成24年3月期の最終利益は、日航が1866億円と過去最高となったのに対し、全日空は281億円と大きく水をあけられた。伊東社長は、日航の再生について「再生に向けた努力に敬意を表したい」としながらも、不満を隠さなかった。
伊東社長の発言の背景にあるのは、会社更生法適用に伴う“特典”だ。金融機関は約5200億円に上る日航の債権を放棄。それだけでなく、破綻(はたん)時に発生した赤字は次年度から利益と相殺して法人税が減免されるため、24年3月期の法人税は約350億円軽減された。法人税の減免額は、9年間で総額4千億円にのぼるとの試算もある。