チッソの事業子会社であるJNCは27日、除染廃棄物などの焼却灰の洗浄汚染水に含まれる放射性セシウムを短時間、低コストで除去・回収する技術の開発に成功したと発表した。磁石を用いて汚染水からセシウムを分離し、除去・回収する。年内を目標に実証実験を実施し、早期の実用化を目指す。震災がれきの処理を後押しする技術として注目されそうだ。
セシウムを含む焼却灰洗浄後の汚染水に、吸着剤となる「フェロシアン化ナトリウム」を加えてセシウムと結合させる。さらに、鉄イオンを加えて反応させ、アルカリ水溶液を添加すると、磁性を帯びたセシウム結合体が生成される。この結合体を磁石を使って分離し、汚染水内のセシウムを除去・回収する。
従来のゼオライトなどの固形吸着剤を使う場合は1トン当たりの処理に数時間かかるが、今回開発された技術を用いれば数分以内での処理が可能になるという。処理後の廃棄物量も低減できるほか、処理に使う材料の入手も容易で安価なため、処理費用を大幅に削減できるという。
東日本各地の焼却場では、除染廃棄物をはじめ、草木や一般廃棄物などの焼却灰から微量の放射性セシウムが検出されており、その効率的な除去・回収技術の開発が求められている。
JNCは早期の実用化に向け、年内を目標に千葉県市原市の協力を得て実証実験を行う予定だ。