国内の風力発電市場【拡大】
日本の洋上風力発電市場に内外の重電メーカーが熱い視線を送っている。陸地に電気を送る新たなインフラが必要となる割高な整備コストが敬遠され、これまで国内では“日陰の技術”だったが、脱原発依存の政府方針で状況が一変。四方を囲む広大な海を利用し、発電能力を大幅に拡充できる新電源の「超有望株」に浮上したためだ。
国内のシステム事業で先行する日立製作所と三菱重工業に続き、東芝と独シーメンスも参入を表明。技術買収の動きも活発化するなど、早くも市場の主導権争いがヒートアップしている。
「競争環境は厳しいが、負けないように、事業基盤の強化を急ぎたい」。こう話すのは、日立製作所で洋上風力事業を手がける松信隆チーフプロジェクトマネージャーだ。同社は、今年7月、富士重工業の風力発電部門を買収したのに続き、国内最大級の出力5000キロワットのシステムの開発に着手、洋上風力発電分野へ本格進出した。
日立の風車は、富士重の技術を応用し、風を真向かいに受けることで常に羽根が動き続ける仕組みで、格段に発電効率を高めたのが特徴。風車の土台を海に浮かべ、鎖で海底につなぐ「浮体式」と呼ばれる深い海に適した方式と、風車を支える柱を海底に据え付ける「着床式」と呼ばれる遠浅の海向けのいずれの方式にも対応。同社では高効率の特徴を売り込み2015年度に風力発電事業の売上高を11年度比3.2倍の800億円に引き上げ、国内首位を狙う。