クラウドコンピューティングや情報端末を使い、急な宿泊内容の変更などを確認する老舗温泉旅館「陣屋」の従業員=神奈川県秦野市(同館提供)【拡大】
長い伝統を持つ「老舗」の旅館や工場で、業務効率改善のため最新鋭のクラウドコンピューティングを活用する動きが広がっている。顧客のニーズを瞬時に把握、共有することでサービス向上を図るほか、従業員同士の連絡にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を用い、通信コストも削減。収益力を強化する狙いだ。
「クラウドで顧客情報や業務状況が『見える化』し、各従業員が全体的な視野で行動できるようになった」。神奈川県秦野市の温泉旅館「陣屋」の宮崎富夫社長はこう語る。
同館は大正7(1918)年創業の老舗。これまで得意先や常連宿泊客の顧客情報は「女将(おかみ)とベテラン従業員の頭の中だけにあった」(宮崎氏)うえ、宿泊予約は複数の紙台帳で管理。女将が急に欠勤したり、紙からの写し間違いがあると、旅館全体の業務が滞った。宿泊プランの急な変更に対し、各部門で情報が共有できず、従業員が右往左往するケースもあったという。