子供服業界で有名な老舗だったフーセンウサギ(大阪市中央区)が10月15日、大阪地裁に破産を申請した。負債は約29億4000万円。全国に75の直営店、百貨店157カ所もの販売拠点を持ち、自社ブランドに加え、スポーツメーカー「NIKE(ナイキ)」の子供服のライセンス販売など有力ブランドも抱えていた。だが売り上げ低迷に歯止めがかからず、再生ファンドによる立て直しも実らなかった。
同社の歴史は、大阪の繊維問屋街で1921(大正10)年に創業された「渡辺一良商店」にさかのぼる。風船を持つウサギのロゴマークとともに子供服の事業を拡大。78年から自社ブランド「CELEC(セレク)」を展開し、高級路線のベビー服が出産祝い用などに人気を集めた。
事業拡大の原動力は百貨店での販売だった。「どこに出しても恥ずかしくない高品質の商品」。このブランド力に支えられ、ピークの97年2月期の年商は約300億円にのぼり、子供服専業メーカーでは最大手の一角を占めた。自己資本比率が約70%の優良企業でもあった。
だが、消費不況やデフレで消費者の百貨店離れが進み、90年代後半から売り上げは下がり続けた。百貨店での販売はステータスとなるが、在庫リスクは実質的にメーカー側が負担し、もうけが少ないのも実情だった。
主力の百貨店販売が落ち込むと大幅な損失を出し、内部留保を食いつぶした。2006年には投資ファンドの出資を受け入れて経営陣を刷新し、経営再建に取り組んだ。CELECブランドを細分化し、ショッピングモールなどに安価な価格帯で直営店を展開。小売業者への卸売りやネット通販も手掛けた。