■「細胞シート」事業化 新法で早期実現
--事業の礎であり、東京女子医科大学の岡野光夫教授が技術を開発した細胞シート工学とは
「細胞から組織をつくる技術。具体的には、患者からもらった細胞の幹細胞を増殖させ、温度応答性の培養皿を使って37度で培養した後、室温に戻すと、培養細胞がシート状に連なった『細胞シート』となる」
--細胞シートの実用化で、医療はどう変わるか
「食道などさまざまな臓器や角膜、軟骨に使うことを想定している。食道がんの手術で、がんを内視鏡を使いながら広範囲に切除すると、食道がすぼまって狭くなり、食べ物や飲み物がのどを通らなくなる。こうした場合、除去した部分に細胞シートをかぶせれば、食道上皮を早期に再生させることも可能だ。すでに東京女子医大と長崎大学が共同で臨床研究を始めており、早期の事業化が期待できる」
--再生医療安全性確保法と改正薬事法が11月に成立し、事業を進めやすくなりそうだ
「安全性を担保し、有効性が予見される場合は薬事法の承認が早期に得られるようになる。従来は、先端医療の事例が豊富なフランスで治験(臨床試験)を先に進め、成功事例を日本に持ってこようと考えていたが、新法の成立でフランスよりも日本の方が早く事業化できる可能性が高くなった」
--細胞シートの未来像は
「これまで取り組んできた患者自身の細胞を使う細胞シートを第1世代とするなら、患者以外の『他家細胞』を使うシートが第2世代、さらに人工多能性幹細胞(iPS細胞)を原料にしたものが第3世代と位置づけられる。第3世代は、iPS細胞を増殖・分化させてできた特定の組織を、細胞シート工学との組み合わせでシート化する方法で実現できる可能性がある」