シグマクシス・倉重英樹会長兼社長【拡大】
■経営コンサル、戦略実現まで一貫支援
企業の抱える問題点を明らかにし、事業戦略を作り上げる役割が経営コンサルティング。しかし顧客の間では、戦略を策定するだけで、実施と結果については責任を持ってくれないといった不満がくすぶりがちだ。こうした中、シグマクシスでは戦略立案から実行、成果の実現までを一貫して支援することで、信頼感を向上させることに力を入れている。倉重英樹会長兼社長に事業戦略について聞いた。
--『戦略実現のシェルパ』を掲げている
「シェルパはヒマラヤに住む登山のプロフェッショナル。荷物を背負い、登山家と登頂から下山までを共にする。気候を熟知し、登山者の健康状態を把握して登山計画全体をマネジメントする力がある。シェルパの実力次第で、登頂の成功率も違ってくるとされる。従来の戦略だけを示す経営コンサルティングのあり方に疑問を持っていた。シェルパのようにクライアントとともに戦略を作成して実行し、結果に対して責任を持つことが当社の売りだ」
--日本アイ・ビー・エム(IBM)副社長からコンサルティング業に転じた
「冒険をしてみたいと思い50歳で、経営コンサルティングのプライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(PwC)の会長に就任した。IBM時代は顧客に合わせた提案書を作成し、使用メリット、他社製品との違いなどを浮き彫りにして営業していた。これはコンサルタントのような仕事。PwCでさらに実績を上げシグマクシスの設立に関わった」
--会社組織では自らのやりたいことが通らないことが多い
「会社内で希望の仕事に取り組みたいのであれば、企画書を提出すればいい。採用されれば予算がつき、プロジェクトチームも立ち上げられ、すぐに始められる。起業をするという方法もある。日本では出るくいは打たれるという風土があるので、経営者が企画書を出せる雰囲気を整えることが大事だ。企業改革は社長が先頭に立たなければならない」
--昨年12月に東証マザーズ上場を果たした
「コンサルタントの仕事は労働集約産業だ。事業を成長させるには人員を増やさなくてはならないが、質の確保が難しい。経験から言えば1000人が一つの限界点だと考える。それまでに別の成長分野を開拓しなければならない。そのための事業資金を得るために上場した」
--今後の成長戦略は
「コンサルティングのほか、新規ビジネスとして、ベンチャー企業などとの共同事業や投資育成を展開していく。私たちはシェルパなのだから、当然の成り行きだ。また、コンサルタントは自分で経営をしたくなるものだ。それがこの業界の離職率の高さにもつながっている。しかし当社では会社を辞めなくても経営に関与できる。コンサルタントと新規ビジネスの両輪で“人財”を育成し、5年後の売上高は現在の約100億円から数倍に成長させたい」(佐竹一秀)
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【プロフィル】倉重英樹
くらしげ・ひでき 早稲田大学政治経済学部卒。1966年日本アイ・ビー・エム入社。取締役、副社長を経て、93年プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント会長就任。日本テレコム社長、RHJインターナショナル・ジャパン会長を歴任。2008年シグマクシスを設立し、現在会長兼社長。71歳。山口県出身。
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【会社概要】シグマクシス
▽本社=東京都港区虎ノ門4-1-28 虎ノ門タワーズオフィス9階
▽設立=2008年5月
▽資本金=23億7300万円
▽従業員数=362人
▽事業内容=企業戦略立案、企業革新、企業情報システムの構築