鹿島酒蔵ツーリズムの主役、鹿島市内の蔵元6社のメンバー(鹿島酒蔵ツーリズムのホームページから)【拡大】
□平出淑恵さん(酒サムライコーディネーター)
地酒が世界一に認められ、地域振興策がスタートした町がある。佐賀県鹿島市だ。2011年、世界最大規模のワインコンペティション、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)日本酒部門で、市内にある富久千代酒造の「鍋島大吟醸」がチャンピオンに輝いたのがきっかけだ。
鹿島は人口3万人。150万人都市の福岡市と、40万人の長崎市から、JR長崎本線などを走る特急で、それぞれ約1時間の距離にある。日本三大稲荷の一つ「祐徳稲荷」と干潟で知られ、主な産業は農業というのどかな土地柄だ。
ここにIWC開催地のロンドンから「世界一」の知らせが届き、大騒ぎになる。まず、佐賀県酒造組合の若手が、佐賀市で盛大なお祝いの会を開くと、古川康佐賀県知事も駆けつけて県内の酒蔵の面々を励まし、その後、地元の鹿島でも、さらに大きな祝賀会が催された。
このとき、この世界一の栄誉、チャンピオン・サケをはぐくんだ町で活用しようと「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」が発足した。初代会長には富久千代酒造の飯盛直喜社長が就任。鹿島市と鹿島市観光協会、佐賀県も加わって毎月会合を行い、翌12年3月の蔵開きの祭りを、市内の6つの蔵合同で開催することを決めた。2日間の祭りに3万人が集まり、約2000万円ものお金が落ちたという。この祭りが、政府の「國酒プロジェクト」の一環として開かれた観光庁の酒蔵ツーリズム推進協議会で紹介されると、さらに認知度が高まり、13年は5万人規模に膨れあがった。